『さんぽする』
「さんぽに いってきますにゃあ。」
「まだ、この辺りの地理は分からんだろう…あまり、遠くまで行くなよ。」
「わかってますにゃ、それじゃあ おしごとがんばってくださいですにゃ。」

休日ではあるが、張コウは持ち帰りの仕事がある様子。
邪魔になっては、という気持ちと。
猫本来の好奇心と。
そんなふたつを抱いて、淮にゃんは外へ散策に出掛けてゆく。

空は、澄み切った快晴。
加えて凛としたこの空気は、冬が近付いている事を如実に窺わせる。
双眸に映るもの総てが、美しく映えて見えて。

だけど。


季節が贈る以上に。


「…ちょーこーどのにひろってもらえて、よかったですにゃあ…」

ぽそりと、誰に向けるでもなく淮にゃんは呟く。
ひとりの時も、同じ様な空は…きっと、あった筈。

けれど、気付けなかった。
霞んで、見えた。


それが、今は。



出会えた事で、映る景色が変わった。



「……にゃ、ねころぶのに ちょうどよさそうな かわらですにゃあ。」

何処というあても無く歩んでいると、さらさらとした穏やかな流れを湛えた河川敷が淮にゃんの視界に入る。
天気の良さから、陽光が土手にぽかぽかと当たり。
程好く都会の喧騒からも離れた、猫にしてみれば絶好のお昼寝場所。

「ここで ちょーこーどのと、おひるねしたいですねえ。」

ころん、と身体を横たえて。
流れる雲を、仰ぎ見て。



嗚呼、本当に。
貴方に出会えて良かった。



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