『ねる』
……ふわ……
「…にゃ、う…?」
突如として鼻腔をくすぐる芳醇な香りに、淮にゃんは誘われる。
うとうととした思考の中で、それはとても心地良く。
「…ん…」
魅惑を覚える香気と、張コウの匂いが移るベッドの中で、幸せに包まれて。
もぞもぞと布団の中に再び潜り込み。
さあ。
夢の続きを。
「……って、は、はにゃあ!にどねを してしまったですにゃ!」
「起きたか?」
「にゃ、にゃあ、ちょーこーどの…じかんが…」
ふと、枕元の時計に目を向けると。
既に張コウを送り出さなければならない時間。
「今日は、休みだ。」
「……にゃ?…そうでしたっけ?」
やはり気付いていなかったか、と。
そんな表情を向けて、張コウはカップをふたつテーブルの上に置く。
「それじゃあ、はやくおこして わるかったですね。」
「休みに、早く起きてはならん訳でもあるまい。」
「それはまあ、そうですけれど…」
ちょっと、申し訳無さそうにしょんぼりしている猫に張コウは近付くと。
抱え上げて無理矢理に目線を合わせる。
「にゃ、にゃあ…?」
「…朝飯にするか。」
「……はい、ですにゃあ。」
じっと見詰められた目元が細められて、思わず淮にゃんも笑顔を零す。
その後ろで。
キッチンからは、ドリップを続ける珈琲の香りが零れていた。
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