『黒髪を飾る花』
深き律動に抗う事無く身体を任せ。
喘ぐのは声のみにあらず、その身の総て。

ぢゅ、ずっ…じゅぷ…っ…じゅ、っ…

「っは、あ、ンっ…あっ、あ、あっ…!……っく、う、ァっ…!」

悦き場所を強く掠めながら一際に突かれ、ぎり、と背に敷かれた己の着物を郭淮は掴み上げる。
張コウの背に腕を寄せていては、立てる爪の加減も出来そうに無い。
縋り寄せたい想いは在れど…掴んだ紅き装束に浮かぶ、無残な爪痕がそれを思い止まらせて。

「…俺に掴まっていても、構わんぞ…」
「…駄目、ですよ…怪我をさせてしまいそうですから…ね。」

突いた奥で留められ、脈動を受けるその度に内は強請る様に咥え。
留められているというのに、息を整える事もままならない。
寧ろ、微弱に揺れるその刺激にもどかしさを覚えて欲を誘い招く。

「…ならば、言い方を変えよう…俺に、掴まっていろ。」

また、そんな。

「…そう、申し上げられては…しょうがないです、ね……だけど、本当に加減とか出来そうにありませんよ?」
「ふ…臨むところだ…加減される様な抱き方をするつもりは毛頭無い。」

そうして細められる双眸の、何と蠱惑。
どこまでも惹き付けられるそれに、吸い寄せられる様、縋る腕。

「…ん、ん…っ…ちょうこ、う…どの…」
「…郭淮…」

縋り、引き寄せたが故に揺れる脈動に熱く吐息を漏らして。
敷かれた装束が、千切れた紅き華の園を思わせるならば―――張コウの眼前に晒される郭淮の艶は、ただひとつ大輪に咲く華。
濡れ羽の如き黒髪が軽く乱れ、紅と美しく対比される。

じゅ…っ…ぢゅ、ぷ…っ…!

「あ、ンっ…!」

欲を招く事を心得た肢体へ、再びに繰り返される律動。
躊躇無く打ち付けられるそれに、堪え切れず立てた爪は既に赤を滲ませ。

その、背に。
図らずも残す情交の跡。



見えはせぬ、それもまた。
花と華と映るものか。



…ず、る…

「……っ、あ……ちょ、うこ…う…ど、の…っ…?」

不意に自身を引き抜かれ、咥え込んでいた郭淮の内は喪失感を覚えて孔はひくりと震え。
如何な事かと小さく問えば、張コウもまた、囁く様に。

「…背を、向けろ。」
「…背、ですか?」

異なる体位を求められ、それに反するつもりは無いが。


ついつい。


「……やっぱり、背中が痛かったですかね?」
「……そう言うのであれば、変えんでもよいが。」
「いやいや、冗談ですよ。」

気だるい身体を翻し。
背を向けて待ち望めば、嗚呼、やはり爪は赤を纏っていた。
たとえ、数日を持って消え失せる様な儚き跡でも。

それでも。


それは自分の、証が。



あきゅろす。
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