正義の味方!…なんてね
「…う〜疲れた…!」
屋上から全力疾走したために心臓はバクバクととんでもない音を立てている。運動不足?
体力を少しでも回復させるため、二階の女子トイレへと逃げ込んだ。
……さすがの彼もここには入って来ないだろう。入ってきたら…うん…。
そのまま帰ってくれればいいんだけど
「っなによアンタ!」
「ありゃ?」
トイレに入ったら突然叫ばれた。なによって何よ?
入るトイレ間違えたかな。めちゃくちゃお取り込み中だった……あ、エロい方面じゃなくてね、昼の延長戦?陰湿な女子の群れの中でした。
標的はやっぱり笹川で
「ここに何か用?」
リーダーっぽい女が言う。
ここはトイレなんだから、用ある人はいるよ。
「…鬼ごっこで休憩中?」
息を整えながら簡単に自分の状況説明。ていうか人口密度が高いよ。トイレの中でこの密度ってどうなの?みんなトイレ好きなの?花子さんなの?
「はぁ?子どもっぽいことしてんのね。早くどっか行きなさいよ」
周りの子分みたいな女たちがクスクスとわざとらしく笑う。好きで鬼ごっこしてるわけじゃないんだけどね。リアルに捕まったらタダじゃ済まされない!
「風紀委員長に追っかけられるのが子どもの遊びなら、今の子ってなかなかデンジャラスだねぇ」
フフッと笑う私の言葉に固まる女たち。
そりゃそうだろうけど
「ちょっ…お前どっか行け!」
下っ端が叫ぶ。周りの女子たちもあわあわ。
そんなに騒いだら見つかっちゃうよー?見つけて欲しいの?
「騒がないで」
リーダーの女が言う。やはりこの人数を仕切ってるだけあって割と冷静。表情は焦ってるけど。
まぁ、この現場を見られたらそれこそおしまいだからね。笹川は一番奥でびしょ濡れ
さて、どうしよう?
普通に出ていったら見つかるかもしれない。でもここにずっといるのも、ねぇ。
他に外に出られるのは一番奥にある窓しかない。そしてここは2階
「…行くしかないかなぁ」
「アンタ、まさかチクったりしないわよね?」
私を睨むたくさんの目、。
チクるとはこのイジメのことかな。…正直いじめ現場っての忘れかけてたんだけど。思い出させてくれた御礼でもしてあげよう。
「イジメをやってるとはいわないよ?」
窓に向かって歩く。窓の下に座り込んでいた笹川が下唇を噛んだのが見えた。俯いた顔。仕方ないと諦めた、顔。
「そう、ならいいわ」
満足げに言う女。
そんな女に私は1つ言葉を付け足した。
「でも、『2階の女子トイレで物凄い水漏れしてます!すぐ来て下さい!』って言うかもしれないなぁー」
ふにゃりと笑って言えば、みなさん驚いた顔。
その間に着ていたカーディガンを脱いで腰に巻く。そして女たちが掴みかかってくるのをひらりと交わして窓に足を掛ける。
「それでは御機嫌よう」
ビシッとポーズを決めて背後からの小さな悲鳴たちを聞きながら飛び降りた。
さてさて、見事な着地のあとに職員室でも行こうかな。もちろん風紀委員長に見つからないように
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