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決別出来ない過去V


「いいえ。知ってるのはアタシと、今聞いた薫ちゃんだけ」



「え?隊長も知らないのかっ!?」



「ふふ…そうよ。この本を隠し持ってたのだって、ホントはあの人の為なんだから」



「…何で…?」



(苦笑しながら)
「あの人、顔に似合わず繊細なのよ。こんな話を知った日には、多分涼ちゃんを上手く使えなくなる。あの人も、政府のせいで大切な人を失ってるから、余計ね」



「隊長も…」



(ため息をつきながら)
「優だけじゃないわ。…隊長クラスの人達はほとんど、過去に何かしらの傷を持ってるの。…それを知ってるのも、もちろんアタシだけよ」



「津さん…は、大丈夫なのか…?」



「ふふ、優しいのね、薫ちゃんは。アタシは平気よ。案外タフなの」



「じゃあ何で、私にこんな話を…?涼のことなら、紫乃隊長に話しても良かったんじゃないのか?」



「…晶ちゃんもダメよ。話しても、マイナスにしか働かないから。…でも、何でかしらね。貴女なら……どうにか出来るかもしれないって、思ったの」



「え…?」



「可笑しいわよね。入隊してまだ一ヶ月も経ってない貴女なのに。…でも、アタシ達じゃダメだった彼の心を、貴女なら開いてくれる、そんな気がしたの。……アタシ、これでも人を見る目はあるつもりよ」



「津さん…」



「…なんて、ちょっと話し過ぎちゃったかしら。今日の話、内緒よ?」



「あっ、ああ…。ありがとうございましたっ」



「いいわよ。ちょっとした年上のお節介だと思って貰えれば。…じゃね、おやすみ」



「あ、おやすみなさい…」


(ぱたんと扉がしまる)



『…何だかすごい話だった。私も流石に疲れた、かな……。もう、寝よう』


(静かに退室する)




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あきゅろす。
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