決別出来ない過去U
津
(苦笑しながら)
「でもまぁ、憤る気持ちも分かるわ。アタシも一時期迷ったもの」
薫
「なら、なんで…っ」
津
「…アタシ達が隊長だから。仮にもこんなに大きな組織の中にいるの。それに加え隊長という立場。……一人だけ勝手な行動は赦されない」
薫
「……それは、個人を縛っているんじゃないのか」
津
「そうかもね。でも、上が和を乱す行動をとればいずれ組織は崩壊する。そしたら、どう?この世界はすさみ、荒れ果てる。…分かるでしょ」
薫
「…ああ」
津
「それが分かっていたから、涼ちゃんが入隊する時何度も聞いたわ。本当に入隊するのか、入隊したら自由はないけれどいいのか、自覚や覚悟は有るのか。……でもね、揺るがなかったのよ、あの子。正直、降参だったわ。これが地獄を体験した子なんだって」
薫
「地獄、か…」
津
「分かる?愛する人が目の前で崩れ落ちていった時の彼の心。きっと、いっそ死んだ方がましと云うくらい、…自分の無力さを呪ったんだわ」
薫
「……うん」
津
「それでも壊れなかったのは彼の精神力ゆえと言った所かしら。これが普通の人だったら、きっと狂って、挙げ句の果てには多分もう死んでる」
薫
「……このこと、隊長クラスの人達は知ってるのか?」
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