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scene 3
ケイ
「……そうか。今までずっと、そうやって……間違った世界を【なおして】来たのか」


ユウキ
(笑うが、答えず)
「………」


ケイ
「こうして僕達が真実を知ったことも、また【なおされる】んだろう?」


ユウキ
「ですねぇ。だってこれは起こってはならないことですから」


ケイ
「誰だよ、そんなことを決めたのは」


ユウキ
「うーん、難しい質問。どうだろうなぁ。……神様が決めたとも言えますし、人間が決めたとも言えます」


オミ
「謎かけ?嫌いじゃないよ、解いてみせようか」


ユウキ
「解いても妖怪さんは忘れちゃいますよ。……また起こってはならないことが起こる前に戻って、やり直すだけです」


ソラ
「んだよ、それ。馬鹿にするにもほどがあんだろ。間違ったら世界ごとなおす。それをして、何の意味があんだよ」


ユウキ
「意味かー。この世界はね、ほぼ人間によって動かされているんです。だから意味を問うなら、ぜひ彼らに」


リョウ
「質問を変えよう。君は一体どうしてこんなことを続けているの?」


ユウキ
「神さまの為。神さまが望んだ世界を造る為」


ケイ
「神の望んだ世界?……って?」


ユウキ
「……複雑な話ですよ。神さまは争われているんです。他の神さま方とね」


オミ
「ちょっと待って。……え?もしかしてそんなくだらない事に俺たちは巻き込まれてんの?」


ユウキ
「正直私もくだらないと思いますが。いかんせんこの世界は神さまが造られた物ですからねぇ」


リョウ
「頭が痛いよ……。で、その争ってる内容ってのは?」


ユウキ
「どれだけ完璧な世界を造れるか。どれだけ豊かな世界を造れるか」


ソラ
「何だよ、完璧とか、豊かとかって。そもそも完璧なんてあり得ないだろ、必ずどこかで綻びがあるんだから」


ユウキ
「だからこの世界はまだ製作途中なのです。その綻びを【なおし、やり直す】。その為の私」


オミ
「人間が世界を動かしているってのはどういう意味?」


ユウキ
「あー。……どれだけ豊かな世界を造るかっていう項目を、ウチの神さまは【どれだけ願いが叶い、幸せになるか】って解釈をしててですねぇ。とにかく人間の願いを叶える方向で行くことにしたんですよ。……だから、ほら。人間が何を願うかによって世界は変わっていく」


ケイ
「……それで、今の世界が出来上がって来ていると」


ユウキ
「はい」

ケイ
「言いたいことが山ほどある。片っ端から言ってくことにするからな。長くなるぞ」


ユウキ
「早めに終わらせてくださいよぅ。それが終わったら【なおす】予定なんですから」


ケイ
「いいか、お前。今度神に話をする時があったら言っとけよ。人間なめんな!ってな!」


オミ
「話聞いてたら馬鹿にされ過ぎてて頭に来たよねー。まあそれに気付かずのうのうと暮らしてる連中が居るのにも腹が立つけど」


ソラ
「そもそも!!なおすって何だよ!俺たちが精一杯生きた結果が今なんだ!それをそんな簡単に否定されてたまるか!!」


リョウ
「願いが簡単に叶うってのもどうなんだろうね。苦労して手に入れた物こそ価値があると思うけど」


ケイ
「僕達は僕達の幸せを自分で造るんだよ。人に決められるものじゃない!」


ユウキ
(苦笑しながら)
「世界に貴方達みたいな人がいっぱいいたら良かったのでしょうけどねぇ。残念ながらそういう訳にはいかないです」


ケイ
「それにな!!!僕が一番腹が立ってるのはお前のことだ、ユウキ!」


ユウキ
「ええ?私ですかぁ?」


ケイ
「何でだよ!おかしいって思っておきながら、それでも世界をなおし続けてるのは、何でなんだよ!!」


ユウキ
「………へ?な、何でって……」


ケイ
「僕が納得する答えを、してみせろよ!」


ユウキ
「え、えーと……何で……何でだろう……」


ケイ
「お前は考えなかっただけなんだよ!神はおかしいと思っていながら、与えられた役目を疑うことを放棄してたんだよ!!放棄することで自分を正当化してただけだ!!」


ユウキ
「……」


ケイ
「おかしいと思うなら行動しろよ、自分の思うままに動いてみせろよ!!!現状を変える勇気を持てよ!!!」


ユウキ
「……そんなこと、初めて言われました。何度もこうやって、対峙して分かり合えないと解ったはずなのに」


ケイ
「…え?おい、まさかこれが初めてじゃないのか……?僕達が真実を知ったのは…」


ユウキ
「これで何回目でしょうねー。私も貴方達に関わらなきゃ良いんでしょうけど……」


ケイ
「ざけんな!!!!お前はそれで良いのか!!?知り合った人間にすら忘れられて、自分だけ覚えてるなんてそんなの…っ!!」


ユウキ
「仕方ないです。リョウさんの言葉を借りるなら、運命なのですよ」


オミ
「何それ。簡単に諦め過ぎじゃない?」


ユウキ
「簡単に諦めるくらいには、運命と言うものは強いものなんじゃないですか?ねぇ、リョウさん」


リョウ
「っ………それでも、散々今まで思い知って来たけど、でも………抗いもせず流される君は、正しいとは思わない」


ユウキ
「これはまた驚きました。…貴方からそんな言葉を聞くなんて」


ケイ
「なぁ、抗ってみる気は無いのか……?」


ユウキ
「それも面白そうですけどね。……残念ながら時間切れです」


ケイ
「…は?」



(急に世界が回り始め)



ユウキ
「じゃあまたー!機会があったらお話しましょうねー!皆さん!」


ソラ
「くっそ、立ってられない……!!」


ケイ
「こんな、くそ、ユウキ……っ!!」


オミ
「ケイちゃん、危ないって!!そっちもう下が無いって、どんどん無くなってるの見えるだろ!」


ケイ
「でも!!」


オミ
「あの口ぶりからすればまた会えるよ。……きっとその時、俺たちは彼女を覚えてないけど」


ケイ
「そんな…!そんなのって………!!!!っ、ユウキーーーー!!?」



(暗転)



ユウキM
「抗うかぁ。ホントに考えたこと無かったな…。……今はその勇気が持てずにいるけど、いつか、いつかは……」






















(天気がいいある日の午後)


ケイM
「その日は、ものすごく天気がいい日だった。僕は何故か、屋上に行きたくなった。普段は全く行かない場所。でも、行きたくて仕方なかった。……なぜなんだろう。……なんとなく、いやでも、行かなくては。そう気持ちばかりが急いた」


ケイ
「屋上ってこんな風になってるんだな……植物が生い茂り過ぎじゃないか?」


??
「わー!!だーれかぁあああ!!助けてくださいーーー!!!」


ケイ
「!?」


ケイ
「どうした!?」


??
「あああ、心優しい其処の方!!あの子、あの子を助けてくださいっ!!」


ケイ
「あの子?」


??
「ハムスター・ド・三世さんですうううぅ!!!あそこの樹にかろうじて引っかかってるあの子ですうううぅ!!」


ケイ
「ああ……」



(器用に木々を伝っていき)



ケイ
「よっと……はい、もう平気」


??
「はあああ…良かったー!もう、駄目じゃないですか勝手に何処か行ったらー!って痛い引っ掻かないでくださいようー」


ケイ
「良かったな。あれ?………お前、………何処かで会ったことある……?」


??
「ええ!?貴方とは今初めてお会いしましたよ?」


ケイ
「……そう、だよな。うん……悪い、忘れて。……それよりお前、名前は?」


ユウキ
「あ、はい申し遅れました!!私、何でも修理屋をやってます、ユウキといいます!!」



fin.



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