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小話
その気持ちは…。
バイトの帰り道、ふらっと公園に立ち寄った。子ども達が遊具で遊んだり、ボールを蹴ったりして遊んでいた。
翼刃は空いていたブランコに座り、ぼんやりとその光景を眺めていた。
日が暮れてくると、子ども達は帰っていく。
母親が迎えに来る子もいた。
ブランコを少し揺らしてぼんやりとしていると、小学生くらいの小さな少年に声をかけられた。
「おにいちゃんは帰らないの?」
翼刃は少年を見て小さく苦笑する。
「まだ、な。君は?」
「お母さん待ってる。おにいちゃんは?帰らないとお母さん心配するよ?」
少年の言葉に、翼刃は眉を下げる。
「いないよ。だから大丈夫」
「え?お母さんいないの?じゃあ、お父さん?」
「…お父さんもいないんだ」
悪気は無くとも刺さる少年の言葉に、翼刃は困ったように眉を下げて言う。
「おにいちゃん、お父さんもお母さんもいないの?かわいそう。寂しい?」
「…寂しくは、ないよ。お父さんもお母さんも知らないから」
「そうなの…?悲しいね。あ、お母さん!」
少年がそう言う目線の先に少年の母親と思われる女性が立っていた。
「じゃあ、おにいちゃん、またね。ばいばい」
少年はそう言って手を振り、母親の元に走り寄って行った。
少年の姿を見送り、翼刃は溜め息を吐いた。
「かわいそう…か」
そう呟く翼刃の目からは涙が零れ落ちた。
しかし翼刃は自分が泣いている事には気付いていなかった。
「翼刃くん?」
公園の前を通りかかった苑希が翼刃に気付き、近寄ると、涙を流す翼刃にギョッとした。
「翼刃くん?どうかしたのかい?何で泣いてるの?」
苑希に言われ、翼刃はようやく自分が泣いていることに気付いた。
指で目元に触れると指が涙で濡れる。
「え…、俺、何で泣いて…」
翼刃はそう言い、顔を手で覆い隠しす。
苑希は困惑してしばらく翼刃の様子を見ていると、翼刃はポツリと呟いた。
「…子どもって…素直だけど…残酷だな…。俺、…寂しかったのかな…」
何があったかは敢えて聞かず、苑希は翼刃に手を差し出した。
「翼刃くん、帰ろうか」
翼刃は苑希を見上げ、手を取った。
血の繋がった家族はいないが、今は待っている人がいる。
寂しいと言えば嘘になるが、こうして居てくれる苑希がいるから平気だと思った。
翼刃は立ち上がり、苑希と並んで歩き、帰路に着く。

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あきゅろす。
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