ラバーズ
6
誰かが部屋に入ってきた。
それはメイスだった。
メイスはエストに近寄り、そっとエストの頭を撫でた。
「ごめんな…。お前は本当は長くないかもしれないんだ…」
今は知らなくてもいいんだ。
メイスは再び部屋を出て行った。
エストはゆっくり目を開いた。
メイスが部屋に入って来たときに目を覚ましていたのだ。
エストは起き上がり、アスカの側に立った。
「僕…死ぬんだ。具合が悪いのはそのせいなんだ…」
そう呟いたときだった。
出て行ったはずのメイスが入り口に立っていた。
その手には毛布があった。
「メイ…ス!?」
「…起きていたのか」
メイスの姿を見たとたん、じわじわと涙が出てきた。
そしていつかのようにメイスはエストを抱き締めてやる。
「メイス…僕怖いよ。死ぬのやだよ…!」
涙が止まらない。
エストは小さな子供のようにたくさん泣いた。
メイスの腕の中で、泣き疲れるまで泣き続けた。
そしていつしか二人はそのまま眠っていた。
みんなが眠りについたころ、アスカに微かな異変があったことを誰も知らない。
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