ラバーズ
5
「メイス、ちょっとこっちへ…」
ラインは廊下を歩いていたメイスを呼び止めた。
「エストのことだが…」
ラインは小声で言った。
メイスもラインの言わんとしていることを察し、小声で答える。
「テストが満点だったって喜んでいましたよ。それから…最近なんだか調子がよくない気がする。わかりますか?」
「ああ、あれか…」
「時々思うんです。あの子がどこかへ行ってしまいそうで…」
エストを拾ってから今まで本当の息子のように育ててきたメイスにとって、この現実は辛いものになる。
「大丈夫だ…」
ラインはメイスの肩に手を置いた。
この言葉が気休めになるとは思えないが、辛いのはラインも同じだった。
夢に向かってあんなに一生懸命勉強しても、夢は叶うことがないかもしれない。
「ラインさんありがとう。もう行きますね」
そう言って、メイスは部屋に戻った。
メイスとラインの話し声が聞こえた。
エストは慌てて物陰に隠れ、二人の話を聞いていた。
二人は自分のことを話しているようだ。
一体どうしたのだろう。
確かに最近身体が不調を訴えているのは分かっていた。
自分の身体のことだから。
エストは廊下をふらふらと歩き出した。
「エストくん?」
背後から声をかけられて振り返った。
心配そうにエストの顔を覗き込んでくるのはリアだった。
「大丈夫?なんだかふらふらしているけど。具合が悪いのなら宿舎に帰ったら?メイスに言っておいてあげるから」
「大丈夫…心配しないで、リア姉ちゃん。大丈夫だから」
そう言ってエストはアスカのいる部屋に入って行った。
「アスカ…」
メイスもラインも自分の話をして、深刻そうな顔をしていた。
「ごめん…少し泣いてていいかな」
しばらく泣いたあと、エストは壁に寄りかかり、いつの間にか眠り込んでいた。
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