ラバーズ
4
あれから十年。
「やっぱりここにいたかエスト」
エストはアスカに会いに来るのが日課のように、毎日ここに来ていた。
「ラインさんが呼んでいたぞ」
「わかった。メイス、ちゃんとアスカを見ててね」
そう言うとエストは急いで部屋を出て行った。
「はいはい、大丈夫ちゃんと見てるよ…。って、それが仕事なんだけどな」
メイスはくすっと笑ってエストを見送った。
隣の研究室では他の研究員が苦笑いしている。
十年経った今もアスカは相変わらず少女の姿のままそこにいた。
町から人里離れたここには研究所以外の施設がなく、エストはラインやメイス、その他の研究員たちに勉強を教わっていた。
エストの夢はこの研究所の研究員になることだった。
「ラインさん呼んだ?」
「ああ、エスト来たか。この前のテストの結果だが…よくやったな。満点だ」
「ほんと!?やった!メイスに報告してくるね」
それだけ言うと、エストはメイスの元へ走った。
その後ろ姿をラインは複雑そうに見ていた。
ラインもエストの夢を知っている。
いつかきっとアスカに人としての感情を取り戻してあげたい、というのがエストの二番目の夢だった。
エストが長く生きることのできない体質だということも…。
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