ラバーズ
2
白い部屋に一人の少女がいた。
メイスの上司であるラインが、彼女についてのデータを読み上げる。
「名前はアスカ。年は十七歳だが、数年前から歳をとっていない。感情は無し。よって言葉も通じなければ、話すこともできない。自分の意志では動かない」
今日はとりあえず、みんなで様子を見ることになった。
一通り説明を聞いた後、メイスはラインを呼び止めた。
「ラインさん、ちょっといいですか?」
「何だ、メイス?」
メイスはラインを別の部屋に呼んだ。
「エストのことなんですが・・・」
ラインはメイスから一冊のファイルを受け取った。
「・・・これは」
「念のため調べておいたんです。その結果です。エストはそんなに長くは生きられないでしょう」
「・・・それで、お前は?」
「俺が、あの子を拾った日に熱を出して、エストは記憶を失いました。記憶を取り戻せば何かわかるかもしれません。しかし、ここに来る前に、何があって、何故捨てられたのか。それがあの子にとって辛い事だったのなら、記憶を戻さないほうが、あの子にとって幸せならこのままでいいと思っています」
「そうか・・・」
あの子はあと、どれくらい生きることができるんだろう。
生きている短い間、自分はあの子に何をしてあげられるだろう。
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