ラバーズ
8
「エスト、どこへ行きたい?今日はどこでも好きな所へ行こう」
「本当!?でも、どこでもいいよ。メイス久し振りの休みだから、ゆっくりしたいでしょ?」
エストはわがままをあまり言わない子だった。
ずっとメイスの迷惑にならないように「いい子」でいる。
あまり弱音も吐かない。
「エストこそ久し振りの町なんだからもっと楽しまないと。何がしたい?」
今度はいつ来れるかわからないんだ。
エストは買い物がしたいと言った。
研究所では子供がいないため、エストは与えられた玩具や本を読んだりして過ごしていた。
時々こうして町へ出かけたときも、新しい本などを買ったりする。
「ねえメイス。あれが欲しい」
エストが指し示したものは綺麗なレースのリボンだった。
「アスカにあげたいんだ。きっと似合うと思うよ。ね、いいでしょ?」
アスカの時間は十数年前十七歳のまま止まっている。
研究のため彼女は白いワンピースを着せられている。
「そうだね。アスカも喜ぶよ」
メイスはエストの横で苦笑した。
エストにとってアスカはどんな存在なのだろうか。
「エスト…」
「何、メイス?」
「いや、なんでもないよ」
言いかけてメイスはやめた。
せっかくの気分転換に来ているのに、今言ってはならない。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!