呪解。
9
俺は森の中でボロボロになって座り込んでいる少年を見つけた。
歳は十七、八歳。
森の中で危ないので声をかけた。
「おまえ、こんな所で何をしている?」
「……」
少年は答えない。
答えの代わりに彼の腹が鳴った。
俺は仕方なく、彼を連れて町に出た。
ボロボロだが、彼の身なりはなかなか良い物を着ている。
ついでに言えば、顔も汚れてはいるが、実は整った顔をしているのがわかった。
少年の名前はセシルといった。
このストーリア国の隣にあるギリアという小さな国の王子だという。
ギリアは今、内乱で大変だという。
町に出て、最初に驚いたのは、セシルが何も持ってはいなかったこと。
手ぶらで旅をしていたのだろうか。
それとも何者かに盗られたか。
俺は提案した。
「お前が身に付けている物を売れば結構いい金になる。その服に付いている装飾品とかさ」
「…これだけは売れない」
セシルは持っていた剣を握り締めた。
これは父親の物だという。
飯を食べた後、セシルの身に付けていた物を売り、質素な目立たない服に着替えさせた。
身なりを整えたセシルは、なるほど、王子というのは肯ける。
淡い金髪を肩の位置で切り揃えられ、顔もやはり整っていた。
よく見れば、動作も上品である。
「これからどうするつもりなんだ?」
「国へ帰りたい。帰って国を復興させるんだ。父上のために」
だから、ギリアへ向かうという。
「それなら、まず、首都へ行くといい。この国の王に会って協力を仰ぐんだ」
俺はセシルを連れて首都へ行くことになった。
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