呪解。
6
目が覚めて、最初に見たものは、カイトの心配そうで、今にも泣き出してしまいそうな顔だった。
俺が目を覚ました時には既に泣いていたが。
「お、やっと気づいたか、クラウド。カイトに感謝しろよ」
カイトの横で、リュウや仲間たちも俺の顔を覗き込んでいた。
「え?」
「こいつの泣き声で、野盗どもの動きが止まったんだ。で、何故かおまえさんの怪我も出血の割には傷がほとんどなかった」
それは…呪いだから。
攻撃を受けた部分を押さえて、俺は小さな声で呟いた。
「そうか、ありがとなカイト」
俺は横で泣いているカイトの頭を撫でてやる。
「野盗どもの動きが止まったが、俺たちも動けなくなってさ。カイトの声がすごくて…」
「声?」
俺はカイトを見た。
喋れないはずだった。
カイトは少し恥ずかしそうに口を開いた。
「ク、クラウド…だい、大丈夫?」
言葉を話すのが慣れないのか、たどたどしい。
「あぁ、大丈夫だ。…声、出たんだな。そうか、よかった」
思わずカイトを抱きしめてしまう。
この子には不思議な力があるんだ。
特殊な力ゆえに記憶も言葉も失っていたのかもしれない。
何があったかは知らないが、俺がカイトを守っていかなくてはならないと思った。
彼が俺を必要としている。
カイトが誰なのかわかるまで、無事に彼を安全な場所に連れて行かなくてはいけない。
その後、俺とカイトはリュウたちと別れた。
「あっ、あれ何?」
カイトは空を指さした。
俺たちの頭上には大きな鷹がぐるりと旋回している。
その鷹は俺が連れている鳥だ。
旅の相棒として、そして、残してきた者とをつなぐ大切な役割を果たしてくれていた。
鷹の名はディクルス。
彼は時々贈り物をくれる。
今日も足に手紙を括り付けて来た。
「あの子はディクルスだ。来い、ディクルス!」
俺が口笛を吹くと、ディクルスはスーッと俺の肩に留まった。
ディクルスの足に括り付けられていた手紙を開けてみる。
それは久しぶりの故郷からの手紙だった。
書かれていたのは絶望的な言葉。
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