呪解。 10 ストーリア王の事情 前ストーリア王が亡くなって数ヶ月が過ぎた。 現在、その後を引き継いだのは、第二王子であったリシェールだった。 まだ十七歳の若き王は不満を抱いていた。 彼には兄がいる。 なぜ兄のカイザールではなく、自分が王にならなければならなかったのか。 リシェールは純粋にカイザールを慕っていた。 リシェールが王になった理由は、彼が前ストーリア王の正規の妃の子だったからである。 カイザールは第二妃の子であり、彼は自ら次期王の候補から退いていた。 周りの者はもちろん正室の子であるリシェールを支持していたし、例え、第一王子であったカイザールでも第二妃の子を王にするつもりはなかった。 リシェールの周りの者など、一部の者たちは、正室の子ではないカイザールを支持していなかった。 カイザールはそれを知っていたし、それ以前に彼は自由を求めていた。 全ては丸く収まった。 リシェールはカイザールを謁見の間に呼んだ。 「兄上、やはり私よりも、兄上の方が王に相応しいと思っています。周りが何と言おうと…」 「陛下、それは間違っています」 カイザールは弟の前で頭を垂れた。 態度も他人行儀でよそよそしい。 「頭を上げてください、兄上」 「俺は継ぐ気はないと言ったはず。それに、俺は騎士団に入ることにした」 カイザールは顔を上げながら言った。 「そんな…」 「それから、こういう場では、俺のことを兄上とは呼ぶな」 そう言って、彼は部屋から出て行った。 後日、リシェールは再びカイザールを呼んだ。 カイザールを呼んだ用件はこうだった。 自分は父の後を継ぎ、王になること。 カイザールを自分の補佐にすること。 「不本意かもしれないけど、どうしても兄上には側にいてほしい。仕事以外は何をしていても良い」 「…わかった。お前がそれを望むなら」 こうして、リシェールは王位に就き、カイザールは王補佐になった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |