神無月鎮魂祭T
忠告 1
二つの気配が、その部屋に存在していた。
一つははっきりとした存在。
そしてもう一つは在るはずのない存在。
それは翼刃に近づいた。
少女の姿で。
ふわっと何かが触れたような気がして、翼刃は宙を見た。
目の前には今にも消えてしまいそうなほど、白い少女の姿をしたものがいた。
「由…羅?」
翼刃はそう呼んだ。
少女の姿をしたそれは、答えるように笑う。
そしてその口元がゆっくりと開き、何かを喋るようにパクパクと開閉する。
やがて、それが音となって翼刃の脳内に直接響いた。
『翼刃…よかった』
「由羅?おまえなのか?」
少女は頷いた。
「由羅…なんで?どうしたんだ?」
『翼刃に会いに来たのよ。でも、時間がないの。あなたに言いたい事があって…』
由羅に会えて嬉しかった。
もう二度と会うことはないと思っていたから。
彼女も嬉しそうだったが、ふとその笑顔が曇った。
『翼刃、気をつけて。またあいつが来る。それから…彼と一緒にいてはいけない。早く離れて…』
あいつ…。
三年前、由羅を殺したやつだ。
今でもあいつは翼刃を狙っている。
何の為に?
それから由羅のもう一つの忠告も気になった。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!