神無月鎮魂祭V
10
「そう…だよな。もうあいつも来ないだろうし。紅苑、これからもよろしくな」
そう言って、翼刃は手を差し出した。
改めて言うのが照れ臭いのか、少し顔が赤い。
その手を紅苑が取る。
「ああ、こちらこそ、翼刃。それから…」
紅苑は視線を宙に止める。
そこにはずっと今までのやりとりを見守っていた由羅がいた。
彼はもう片方の手を由羅に向かって差し出した。
「これからもよろしくね、由羅さん」
実体のない由羅は、その差し出された手にそっと触れた。
ふわりと何かがその手を撫でるような感じを受け、紅苑は微笑んだ。
「ありがとう、紅苑、由羅」
俺はもう独りじゃない。
寂しいとも思わない。
そして、もう二度と失わないように。
翼刃は紅苑の手と由羅の手を握った。
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