お祝い夢小説
例えば空を游ぐ魚のように 3
エースの体温と私の体温が、ふたりを温めていくような感覚に溺れてうとうとし始めた頃、エースは私からそっと離れた。
温もりが消えないように、消えてもちょっとずつで寂しくならないように、そっとだ。
「見ろ、イチカ…川みてェだな」
時折吹く風に吊り下げられた電球がゆらゆらと揺れて、光も揺れる。あとは真っ暗なのに、そこだけとてもまぶしい。
「うん。帰りたくなくなっちゃうな」
「ははっ…親父が泣くぜ?」
きっと帰ったらエースはみんなにおめでとうを言われて、私は私でマルコにからかわれたり、するんだろうな。
「なんだか離れがたいね」
ずっとずっと、一緒にいるともっと欲しくなる。ふたりの時間が。そんなわがままな自分。
「おれも」
いつの間にか離していた手をもう一度繋ぎなおす。
「離さねェよ」
「うん。離さないでいて?」
あたりまえだとエースは笑った。だったら私だって、絶対に離さないんだ。
例えば空を游ぐ魚のように
それは幻想的で、忘れられない夜でした
[前へ]
[戻る]
無料HPエムペ!