仔N 一番好きな人・1(主♂N+アデク+カトレア) 「みんな、出ておいで!!」 ポンポンッと次々にモンスターボールを放つと、ポケモン達が元気よく飛びだしてきた。 やってみなと目線を送ると、Nは両手でモンスターボールを抱えながら大きく頷く。 「みんな、でておいで!」 ポーンっと宙に放たれたモンスターボールは、3つ。 それらから、出てきたのはNの大切なトモダチたち。 「みんな、あそぼっ!」 一ヶ所に集まった総勢9匹のポケモン達の所へ駆けよるNのあとを僕はゆっくりとついていく。 広いポケモンリーグの庭園は、彼らの絶好の遊び場だ。 何時ものように、ダイケンキは噴水のある大きな池の中へ。 ケンホロウは空を旋回して、他の子たちはNを囲んでいる。 その様子をレシラムとゼクロムが愛しむように見守っていた。 「きょうは、なにしてあそぶ?」 こてん。と首を傾げて皆に尋ねるN。 Nを囲む彼らは次々やりたいことを口にしてるようで、キャッキャしてるのが分かる。 僕はそれを横目に、旋回を続けるケンホロウを見上げた。 ああ、気持ちよさそうだなぁ。なんて思っていると、ほんと!?とびっくりしたような、でも嬉しそうなNの声がした。 何だろうと思ってそちらに目を向けると、ゼクロムの背に乗ろうとしてるN達の姿がそこにあった。 「ちょ、何始めるの!」 慌ててレシラム達の所へ行くと、ゾロアークに手を貸してもらってゼクロムの背に乗ったNが、おそらっ!と声をあげて思い切り空を指差した。 「ゼクロムたちのね、せなかにのっておそらにいくの!」 ひらりとゾロアークがゼクロムの背に跨る。 レシラムには既にビクティニに、ゾロア、リオルが乗っていた。ビクティニが一番楽しそうにしているから、きっと言いだしたのはこの子に違いない。 「……ったく。レシラム、ゼクロム。頼むよ」 レシラムに乗ったゾロアとビクティニは、リオルがいるから大丈夫だろうし、ゼクロムの方もゾロアークが一緒だから、大丈夫だろ。 それに、言いだしたら止まんないしな…。 レシラムたちが、任せろと言うように声を上げた。 頼むよ。ともう一度声を掛けて、レシラムの首をポンと叩く。 レパルダスが居るところまで離れると、レシラムとゼクロムが大きく空へと飛び立った。 「気持ちよさそうだなぁ」 ケンホロウも交えて旋回する彼らを見上げて呟くと、隣にいたレパルダスが同意するように声を上げて、僕の足に顔をすり寄せた。 「気持ちよさそうね」 後ろから声が聞こえたので振り返ると、カトレアさんが空を見上げていた。 「カトレアさん。こんにちは」 「ポフィンを持ってきたのだけど」 当分戻ってこなさそうね。と、カトレアさんが抱えていたバスケットに視線を落とした。 「あの、ポフィンってなんですか?」 「シンオウで有名な、ポケモン用のお菓子よ。食べてみる?」 バスケットから香る匂いに、レパルダスがスンスンと鼻を動かすのを見て、カトレアさんがポフィンを1つ取り出した。 「どう、美味しい?」 差し出されたそれを一口で食べたレパルダスは、美味しそうな顔をして一声鳴いた。 「ダイケンキも食べてみなよ」 カトレアさんから、もう1つ貰って、ダイケンキに差し出す。どうやら、ダイケンキも美味しかったみたいだ。 「これを食べたら、ポケモンの毛艶もよくなるし、魅力もあがるの。ポケモンコンテストに参加するコーディネーターは自分でそのポケモンに合ったレシピを考えてオリジナルポフィンを作るのよ」 「凄いんですね。これって僕でも作れます?」 「えぇ。専用の機械が必要だけど…そうね、取り寄せてあげるわ」 「いいんですか?ありがとうございます」 そんなやりとりをしていると、バサッバサッと羽ばたく音が聞こえてきた。顔を上げると、ケンホロウがこちらに向かって降りてくる。 「ブラックー!!」 「気を付けろよー!」 旋回を続けるレシラムたち。ゼクロムの背から、大きな声を上げて手を振ってきたNに、こちらも大きな声返した。隣にいるカトレアさんは、手を振っている。 雲一つない青空の中にある2つの大きなドラゴン。 雄大で美しく、寄り添って飛ぶその姿はとても幸せそうだった。 長い間、石の姿で離ればなれになっていた彼ら。一緒にいられるのがよほど嬉しいのだろう、時折鳴き声がこちらにまで聞こえる。 「Nー!そろそろ降りてきなよー」 「はぁーいっ!」 もう一度大きな声でNに言えば、満足したらしく元気な返事が返ってきた。ケンホロウも降りてきたことだし、いったん休憩だ。 「ブラックー!!」 「お帰り、楽しかった?」 「うん!」 レシラムたちが、ゆっくりと着陸すると、Nがゼクロムの背から飛び降りて、僕に向かって駆け寄ってきた。 腰に飛び付いてきたNを抱き留めて尋ねると、Nは大きく頷いた。 「こんにちは、N」 「カトレアお姉ちゃんだ!こんにちは!」 「カトレアさんが、ポフィンっていうポケモンたち用のお菓子を持ってきてくれたよ」 「ほんと!」 これよ、とカトレアさんがポフィンの入ったバスケットを開いてみせてくれた。 バスケットの中に入った色とりどりのポフィンを見て、Nは目をキラキラさせている。 匂いに釣られてなのか、リオルたちも僕らの所へとやってきた。 「落とさないようにね」 「うん!カトレアお姉ちゃん、ありがとう!」 Nはお礼を言ってから、バスケットを受け取ると、その中から1つ取出して、近くにいたゾロアークに差し出した。 スンスンと匂いを嗅いでから、ゾロアークはポフィンを一口で食べた。目を細めて大きく頷くので、美味しかったみたいだ。 「おいしい!っていってるよ!」 「そう。良かったわ」 「N、皆欲しがってるみたいだよ?」 「みんな、じゅんばんね!」 はい、どうぞ!とNが1つずつポフィンを配るのを、カトレアさんと見守っていると、おーい!と背後から、聞きなれた声が聞こえた。 「ブラック君!カトレア!」 「……五月蝿いのが来たわ」 「ちょ、カトレアさん…」 隣でボソッと呟くカトレアさんに、苦笑いしながら振り返ると、紙袋を2つ抱えたアデクさんが庭園に入ってきたところだった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |