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rabbit

 嗚呼、こうも簡単にイかされてしまうとは、情けない、
 と、考えてしまうのが普通なのだろうが。それよりも気持ち良くて病み付きになってしまいそうになる自分に、酷く幻滅した。


「は…っ、はっ…」


 真っ白になった頭では肩を上下させて呼吸する事しか知らず。じわじわと戻ってきた思考に、そういえば思い切り知盛の手に出してしまった、と気付き視線を向ければ、こいつはそれを、ぺろぺろと舐めているところだった。
 初めて、ではない筈なのに、えも言われぬ恥ずかしさに襲われるのは何故なのだろう。色んな意味で圧倒されてしまい言葉を失うと、どうやら付着した精液を指先まで丹念に舐め取ったらしく、べ、と舌を出して、口腔に運ばれたそれを見せびらかしてきた。


「…っ、…そんなもん見せるなよ」
「この程度でへばるのか?」
「…はっ、まさか…」


 そうこなくてはな、とでも言いたげな顔だ。確かにこんなものじゃあ、足りない。足りる筈もない。
 随分お前には待たされたんだ。しっかり責任取ってもらわねえと、な。


「俺を、楽しませてくれるのだろう…?兄上」
「は…その呼び方、止めろって言ったろ」


 どうやらこいつは学習したらしい。たまにこう呼ぶ方が、俺が不快を示す事を。見ていない様で意外と見ているのは、俺を見ろ、と言ったからだろうか。それにしても、命令を聞く、という体にしては生意気というか、鼻に付くというか。
 だが、残念だったな、俺はもう、お前の軽口には慣れたんだよ、昔と違って、な。

 軽く笑ってあしらってやれば、奴はそれ以上言及してくる事はなくて。動けないでいる俺に見せ付けるかの如く、着ていた(着崩していたとも言う)衣をゆっくりと脱ぎ始めた。その色気やら媚態やらを一々気にしていたら朝になっちまう。
 それでも初めて見えるこいつの躯に心臓の音を制御出来ないのは、不可抗力だ。生理現象だ。ごくりと、唾が喉を通るのが分かると、こいつはぽい、と役目を果たさなくなった衣を床へ投げ捨て、その肉体を曝した。


「…奇麗だ」


 ぽつり、と、自分から零れていた呟きに気付くのに少しの時間を要した。はっとして我に返れば、知盛は至極満足気に笑んでいて。
 これから何をするのかと思えば、先程舐めていた指を、自分の尻の穴へ埋め込ませている。どうやらお優しい俺の弟は、俺に躯で奉仕をしてくれるらしい。
 そんな異物が入る筈のない器官であるそこの内壁を押し広げる様に、抜き差しを繰り返している。ただ慣らす為だけとは言え、イケナイ事を覗いている錯覚に陥ってしまう。
 気付けば、先程達した筈の俺の息子は、むくりと頭を擡げ始めていた。おい、俺ってそんなに欲求不満だったか?いや、これこそ不可抗力だ。鼻から抜けるこいつの声音が、腰に重くのしかかってくるのだから。


「クッ、興奮したのか…?」
「当たり前だろ、」
「…それでは、私めが責任を取らせて頂きます」


 何だ、それ。重衡の真似か?似過ぎてて笑えねえぞ。
 ツッコミを入れる間も与えず、(本当やりたい放題だな、こいつ)知盛は仰向けに寝ている俺の躯を跨ぐと中心を宛がい、ゆっくりと腰を落とし始めた。


「は、く…っ、」
「っ、…おい、大丈夫、か…?」


 すげえ、知盛と、繋がってる。
 こいつの体内は想像以上にきつく、狭くて。それでいて刺激を求める様に収縮を繰り返すものだから、中心を包み込まれる熱い内壁に腰が疼き出していた。
 だから苦しそうなこいつに気遣う言葉を掛けながらも、もっと欲しくて堪らなかった。
 それを知盛も分かっているのか、完全に中心を体内に埋め込み息を整えると、腰を前後に揺らし始めた。意図的にぎゅ、と締め付け熱い吐息を漏らす。
 熟れて刺激を求める乳首をぐりぐりと自ら弄っているのを見れば、情欲を煽られても仕方ないというものだ。


「は、ぁっ…、イイぜ、…」


 腹に付く程勃ち上がったこいつの中心に、どうも釘付けになってしまう。その双眼は俺を射抜き、来いよ、とでも語っている様で。その誘いを蹴る程、今の俺は冷静ではなかった。


「く…、知盛…っ」


 踊る知盛の腰を掴み、奥深くまで堪能しようと突き上げる。
 ひ、とか細く悲鳴らしきものが喉から漏れると、それを境にもう抑えなどきかなくなってしまう。何度も刔る様に抽送を繰り返せば、ずちゅ、ぐちゅ、と肉のぶつかり合う、いやらしい音が嫌でも耳へ滑り込んできた。
 翻弄されながらも本能に勝てない、そんな俺を全身で受け止めるこいつは、俺の欲望を芯まで引きずり出してくる。


「はっ…もっと見せてみろよ、有川、っん」


 嗚呼、もっと呼んでくれよ、知盛。その唇で、その瞳で。繋いでくれよ。
 お前から紡がれる言葉全てが俺の細胞の一つ一つまでを支配し、奮い立たせるんだ。
 躯が繋がっているというだけでもどうしようもないのに、それ以上に脳髄の痺れる感覚に、もう原形も保てずどろどろに蕩けてしまいそうで。

 理性をも何処かへやってしまいそうになりながらも、知盛を見れば、欲望に濡れた瞳がこちらを向いていた。その慧眼が見透かしているのは、きっと、俺の全て。
 どんな表情をして良いか分からない俺に、こいつは、


「クッ…有川、愛しているぜ…?」


 心臓を鷲掴みにされたかと思った。かっと瞬時に耳まで真っ赤になるのが分かって。やべえ、もう死んでもいい、とか思っちまった。恥ずかしい。嬉しい。嗚呼、頭の中がぐちゃぐちゃで訳が分からない。至福とは、この事を言うのだろうか。


「…っ!お前、絶対、からかってんだろっ」


 それ以上言葉を続けられない俺に、知盛はらしくない柔和な笑み(俺にはそう見える、末期だ)を浮かべて。それは丸で、お前はどうなんだ、とでも言いたげな。
 好き、じゃあ足りないってか。何処まで言わせれば、何処まで本気にさせれば満足するんだ?お前は。


「俺だって」


 その続きは、知盛の唇によって飲み込まれた。


(お前を、あいしてる、)




rabbit punch
(おいおい、こんなの反則だろ!)
(俺達の間に、規則など在ったのか?)


*


知盛って、兎ぽいよなあ
それが此処まで広がるとは思いませんでした
09/3/7/



あきゅろす。
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