蜜で澱んだのは
どろり。液体とは言い難いそれが垂れた音。
実際はそんな音などしないけれど、そう形容するのが一番適しているのだと思う。
事実その食べ物?飲み物?は非常にどろどろとしていて、喉を通ればねっとりとした不快とも快とも何とも言えない感覚を覚える。
その味は実に甘ったるく、一日の糖分をそれだけで補える程だ。でももっと欲しくなる。足りない。
シーツに付着した甘露を舐めようと舌を揺らめかせながら、上目で視線だけヨハンへとゆるりと向けると、頭を優しく撫でてきた。嗚呼、嬉しい。
「ん、は…っ、ん…」
「…美味しい?」
辺りにあるそれを夢中で貪っていたから、言葉を発する事なく首を何度も縦に振り肯定を示す。
くらくらとする意識の中、何が何だか分からず考える事も放棄した頭は、彼の思うがままに操られていく。
満たされたい。その一心で蜜で口腔を自慢する様に彼に見せた。
するとヨハンはにやりといやらしい笑みを浮かべると共に、優しく手招きした。
四つ足のまま這っていくと、首根っこを掴まれ強引に引き寄せられる。
呻きながらも、蕩けた思考ではただ恍惚となっていたから。表情を緩めたまま、腕を伸ばした。
「…ん、よは…、」
「可愛い、十代」
気付くとヨハンの顔が目の前にあって。
指で濡れた唇をなぞられ、擽ったい感覚に震えると共に、それを口の中に入れられた快感を思い出して、躯は戦慄く。
ぱくりと口を開け指を吸い込もうとすると、途端にその指で顎を掴まれ、くい、と上を向かされて。唇を塞がれた。
「ん…、ん…ぅ」
かっ、と官能の波が押し寄せてくる。
ぬるりと侵入してきた濡れた舌を吸って、唾液を啜ろうと、呻き声を上げながら夢中でキスに躯を委ねる。
彼の声も聞きたいと上顎をつつ、と舌でなぞりながら、柔らかな唇を食む様に刺激し、生温い唾液に包まれる感覚に意識が確実に、蕩けていくのを感じた。
嗚呼、愛しい。気持ち良くなりたい。
ずっと俺に主導権を預けていたヨハンも気が向いたのか、舌を引っこ抜くくらいに吸ってきて、ちゅ、ちゅくと水音を立てて。
何だかそれが愛しげに感じられて、自分からもそれを望んでちゅ、と甘い唾液の音を奏でていった。
そう言えば、さっきの甘い甘い蜜もヨハンに吸い込まれていったんだ。
彼にも甘い味覚が伝わっているか、と気持ち良くて閉じていた瞳を薄く開けて彼の表情を見れば、ふ、と先程の蜜の様に甘く笑んで。
すると、息継ぎの合間に、彼はこんな事を言ってのけた。
「何だ、苦いね」
可笑しな事を言っているね、ヨハン。
お前の放った精液が苦い筈ないのに。
08/7/9/
しろいはちみつ。
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