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金の過去 銀の未来
二十四
「……あのお二方は、お互いに、間違いなく惹かれあっておいでです。ですから捷隆さまは、雪華さまを皇后となさることに反対なさったのです。あの捷隆さまが、この件にあんなに反対なさるなんておかしいと思うべきでございました。
捷隆さまは雪華さまのところに毎日お顔を出しておいでです。わたくしはそれは、まだ宮中でのお暮らしに慣れない雪華さまのことを気づかってさし上げているのだとばかり思っておりました。いえ、それは当然そうでございましょう。もともと、ご自分のところにいらっしゃるはずだった謝さまのご令嬢、そのお付きとしてこちらに上がった方なのですから、お優しい捷隆さまとしてはやはり気になるでしょう。でも、それだけではなかったなんて」
「確かに、毎日顔を出しているのはわしも知っている。おまえの言うとおりの理由だろう。
なんでも初めは、街中で出会ったらしいが。捷隆が街にいるとき、謝徳秀の娘とはぐれてしまった雪華を見つけて声をかけたとか。それで一緒に探したとか」
「わたくしもそううかがっております。その後、もう一度都の街でお会いになっているそうでございます。いつからなのかは存じません。ですが陛下、あのお二方がご一緒のところをご覧くださいませ。
わたくしは先程、夢を見ているのかと思いました。
わたくしが先程雪華さまのところへうかがいました際、ちょうど捷隆さまがいらしていて、お二人でお話をなさっているところでした。お話はとても弾んでいらっしゃるようで、それはそれは仲睦まじいご様子でございました。
ただただ、幻を見ているとしか思えませんでした。まるで昔の陛下と桃葵さまを拝見しているようで……」
老宦官は涙をこぼした。
「陛下は、雪華さまがお持ちの銀の腕輪をご存じでございましょうか?」
「身につけているのは知っているが。いつも身につけているな」
「あれは、捷隆さまからいただいたものだそうでございます」
「捷隆から?捷隆があれを雪華にやったというのか?一体いつの話だ?」
「そう考えるとお分かりでございましょう。少なくとも、雪華さまが陛下にお目にかかるより前でございましょう。初めて雪華さまをお見かけしたとき、既にあの腕輪をなさっておいででしたから」
すると皇帝は、何か思い当たるところがあるようだった。
「……確かにあの腕輪は、わしが捷隆にやったものに似ているとは思っていたのだ。まさか……」
「それはそれは大切になさっておいでなのでございます」
老宦官は、袖で涙をおさえた。
「まるであの腕輪が、捷隆さまであるかのように」
「しかし…にわかには信じがたいが。確かに、ここで二人が一緒にいることはないからな。捷隆がやってくると雪華は下がるから。だからか、そういう様子には気付かなかったが…」
「あのお二方がご一緒のところをご覧になればすぐにわかります。いま、雪華さまがあのようなご用件で捷隆さまのもとにいらっしゃれば、捷隆さまは間違いなく雪華さまをお送りになりがてらこちらにお見えになるでしょう。そのときにご覧くださいませ。わたくしの申し上げていることがすぐにおわかりいただけますから。
それに、だからこそ捷隆さまは女性をおそばに置こうとなさらないのです。謝さまのご令嬢とのお話がなくなってから急に、そのことに関してはお耳をふさがれてしまったのです。謝さまのご令嬢の件がなくなってからというのはすなわち、雪華さまがこちらにお見えになったときでございますから」
「……」


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あきゅろす。
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