◇No title
※死ネタ注意
「長太郎!」
叫ぶが時すでに遅し。
長太郎は、ガードレール脇の花束たちを見て立ち尽くしていた。
「長太郎…」
「そっか、俺…死んだんですね」
その悲しそうな、しかし何かを悟ったような顔に何も言えなくなる。
俺はその事実を知って欲しくはなかった。
例え俺にしか見えなくなっても、姿が見えなくなってしまったとしても、出来る事なら傍に居てほしかった。
「宍戸さん」
「長太郎?」
ふいに長太郎が俺を呼んだ。
今だに目線は花束に向かっているが、真剣な様子は伝わってくる。
「宍戸さんは生きてますよね?」
その言葉は長太郎にとってどれだけの気持ちを込めたものだったのか。
俺には計り知れなかったが、ただ答えるべきなのだという事だけはわかった。
「ああ、生きてる」
生きているという思いを込めて長太郎に告げる。
長太郎は俺の言葉を聞くと、見てるこっちまでうれしくなってしまうような顔で笑った。
「よかった。俺、宍戸さんを守れたんですね」
そして、その言葉を残して長太郎は消えた。
まだ、思い出せばアイツの姿もぬくもりも俺の傍に居るのに。
もう長太郎はいない。
でも、俺は生きていく。
だってこの命は長太郎が守ってくれたものだから。
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また思い付き。起承転結の結のみ。(07.01.19)
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