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◇線香花火


「宍戸さん。花火しませんか?」

もう眠る体勢になっていた所に、いきなりの長太郎からの電話。

なぜ、こんな時間帯に花火なんか?と思ったが、せっかくの誘いを断るのも気が引けたので適当に相づちを打った。

「じゃあ、○○公園で待ってます」
「わかった」

そして電話は切れた。

***********

「宍戸さーん。こっちです」

公園まで行くと、長太郎が両手を振って出迎えてくれた。



「何でいきなり花火なんかしようと思ったんだよ?」

俺は花火――といっても線香花火だが――を眺めながら長太郎に尋ねた。

「二人で過ごせる夏は初めてだったから」
「それで、何で花火なんだよ。しかも線香花火だけだし」
「思い出作りです。普通と違う方が忘れないじゃないですか」

そういいながら長太郎が微笑む。
微かな線香花火の明かりに照らされたその笑顔が、とても綺麗だと思う。

「それに…最初で最後かもしれないし」
「何で?来年もやりゃいいじゃん」
「えっ。来年もしてくれるんですか!」

俺の言葉に、長太郎がいきなり立ち上がる。
その反動で、長太郎の手の中の線香花火の明かりが落ちる。

「あ。落ちちゃった…」
「いきなり立つからだろ」
「だって宍戸さんが…」

まるで俺のせいみたいな言い方をしてくる。

「お前が変な考えしてるからだろ」
「……」
「俺は、お前がイヤだって言うまで何度でも思い出作ってやる。お前が望むかぎり何度でも、な」
「宍戸さん」

俺は手放す気なんかない。
たとえこの線香花火のように落ちそうになったて、ギリギリまで抗ってやる。

「宍戸さん、格好よすぎ…」
「当たり前だろうが」

俺達は微かな線香花火の明かりを頼りに、軽く口付けを交わしあった。

これは終わりでなく始まりなのだから。


――――――後書き
何が書きたかったんだろう?
(06.08.15)



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