κ
白蓮
靴を履き替えて歩き出そうとした時、校門の辺りがヤケに騒がしいことに気付いた。
…ものすごく嫌な予感がする。
しかし、嫌な予感と言うものは的中率が異常に高いもので、大抵の場合、恐れていた最悪の事態が起こる。
今回のそれも御多分に洩れず、…校門に、あいつがいた。
私をハメた張本人だ。
蓮見蓮(ハスミレン)、私の8歳からの保護者である。
白金の髪に淡紅色の瞳。
所謂アルビノと言うやつだ。
紫外線に弱いため、年中、長袖長ズボン、サングラス装着である。
私がこの世界で最も尊敬し、慕っている人物だ。
蓮見さんは、性格はちょっとアレだが、優しくて、私のことを想ってくれる、親というか兄のような存在だ。
彼は目立つ外見なのでさっきから周りの人間が騒がしいのは仕方がない。
蓮見さんは私を見つけると寄りかかっていた校門から背中を離し、手を振って来た。
入学式の時はこの所為で散々な目にあったのだ。
「壱弥ー!」
「…。」
腹いせに無視する事にする。
今度はお前が恥をかけばいいのだ。
「いーちやー?」
「…。」
無視、無視。
周囲の視線も気にするな。
心頭を滅却すればなんとやらだ。
「おーい。壱弥ちゃん?」
「…。」
このまま蓮見さんの目の前を颯爽と通り過ぎ…
「壱弥ちゃん?どうしたのかな?」
「…。」
通りす…
「フフフ。」
「…!」
畜生。
「壱弥ちゃん、いい匂いがす」
「離せ!この変態がっ!」
いきなり私に抱きついてきた変態野郎を振り払って、拳を目一杯振り上げ、下ろした。
しかし、目の前の男はいとも簡単にかわしてしまう。
「駄目だよ、女の子が暴力振るったら。」
「…ッ!」
「それと、振りが大きいとかわされちゃうよ?…それとも、俺を傷付けるのは忍びない?そっか…、分かった分かった。でも壱弥ちゃんになら傷付けられてもいッ、」
私は咄嗟に奴の口を塞いだ。
勿論、手で。
そのまま袖を掴んで停めてあった蓮見さんの車まで引き摺って行った。
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