TROIS ラスト・クリスマス X しばらくし、カチャカチャと工具をとる音がして、彼の息づかいが携帯を通じて耳に届く。 『工具を見つけた。どうすればいい?』 「まずケースを開きます。くれぐれも慎重に、落ち着いて…。こういった爆発物は少しの振動でも爆発しかねません。少しでも異常を感じたら作業を中止してください」 『判った…。幸運を祈っていて』 秒針を刻む時計の音が、誰もいない捜査本部にカチカチと響き緊張を煽る。 知らずのうちに手のひらがじっとり汗ばんでいた。 熱、ショック、摩擦、…この瞬間にも電源が起爆剤を起動させ激発が起これば、ヘリの燃料もろとも大爆発しビル自体の崩壊にもなりうる…。 嘘偽りを言ってでも、彼を避難させるべきだったのかもしれない。 いくら望んだこととはいえ、彼を巻き込んではいけなかった。 心の奥底でLではない私が己自身を責める。 緊迫の時間が過ぎ、カタンと床を打つ金属音が携帯の向こうで響いた。蓋は無事に外れたのだろうか。 私は安堵のため息をつく。 しかし、本当の勝負はこれからだ。 私はデータ保全作業を急ぎながら、第一の難関を乗り切った彼に心からの労いの言葉を送った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |