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TROIS
ラスト・クリスマス W


警視庁から派遣された夜神総一郎が、名門東応大学に在籍する息子を紹介したいと言い出したのは6ヵ月前のこと。
何件かの迷宮入りかと騒がれた事件を解決に導いたという優秀な頭脳に私は興味を引かれ、夜神総一郎の申し出を承諾した。
その後、想像より遥かに明晰な頭脳の持ち主であると判り、彼の希望もあって正規ではないが捜査員の一人として迎えることとなった。
そして、彼のひたむきさに押しきられる形で付き合い始めたのが今から2ヵ月前。
付き合っているといっても、専ら会うのはこの本部ビルで、デートらしいデートなどしたことはない。それでも、彼と過ごした日々が…、想い出が、走馬灯のように浮かんでは消えてゆく…。
こんなに、私は彼に染まっていたのかと苦笑さえこぼれる。

――その時、感傷を破るように私の携帯の着信音が鳴り響いた。
爆発物が見つかったのだろうか。…ここを動けない今は、彼の卓越した頭脳と手先の器用さに頼らざるをえない。
爆発物の状態さえ判れば、彼に指示を与え私が駆け付けるまでの時間を稼ぐことができる。


『竜崎っ、今地下一階の倉庫…おそらくこれだ!』

「月くん。落ち着いて行動してください、まだ触れてはいけません。…爆発物の状態を確認したい、一旦携帯を切りカメラで撮影してこちらへ送っていただけませんか」

『判った…!』

私は携帯を切り、画像の受信を待った。
数分後、受信した画像のいくつかを私は確認する。
それはさながら事務機器であるように、ロゴをステンシルしたケースに隠されていた。
4ヵ所を小さなネジで閉じられたケース、あらゆる角度から撮影された箱の状態から工具で開けられそうだと胸を撫で下ろす。

しかしそれは気の抜けない作業になるだろう。蓋を開けた途端に爆発するトラップもある。
私は再び彼の携帯を呼び出した。

「月くん、倉庫の奥の部屋に作業員用のツールボックスがあるはずですそれを取って来て下さい。急いで。」

『ああ…』

耳障りな雑音が彼の声を邪魔する。電波の状態がよくないのだ。




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