キミだけを見つめたくて
18
そのまま待ち合わせ時間の15分前まで喫茶店で本を読んでいた恒司は翠理からのメールで待ち合わせ場所に急いだ。
メールには「みんな集まったからそろそろ出て来たら?」と書いてあった。
別に隠れていたつもりはなかったのだが、皆がそろっているなら急いだ方がいいと思ったからだ。
「っよ!寝坊助」
集合場所に着いて早々にからかいの声を掛けてきたのは芹澤。
「っえ?先輩、寝坊ですか?」
天然なのかわざとなのか見分けが付かないノリで尋ねてきたのは伊吹だ。
「寝坊じゃないよ。現に時間には間に合ってるだろ?」
ふと、碧理に視線を移すと「おはよう」っと笑顔で応えられた。
「っさ、行きましょうか。私、朝ご飯食べてないの」
碧理の一声で一同は動き出した。
目指している複合商業施設は、駅からの陸橋伝いに渡ることができ、駅前第一ビル、サウスモール、ノースモールそしてサウスモールの南側にはシーサイドエリアへと繋がっている。
一行は広場から階段を上り、駅前第一ビルを抜け、ノースモールの展望レストランを目指す。
展望レストランという名の通り、海が見えるレストランで高校生には少々値が張るが芹澤の為に恒司が予約したのだ。
「展望レストランかぁ〜私初めてかも」
「私だって初めてよ?」
伊吹の言葉に隣にいた碧理が応える。
「おい、本当に良いのか?」
後ろの会話に聞き耳を立てていた恒司に小声で芹澤が問い掛ける。
「なにが?」
合わせるように小声で応える恒司。
「今日の予算。俺、そんな手持ち無いぞ?」
芹澤の実家はここから山を三つ越えたさらに向こうで、こちら側にアパートを借りて一人暮らしをしている。
もちろん、そんな彼に持ち合わせがないのは分かり切っていたので、恒司も用意していた答えを返す。
「いいよ。俺の奢りだから」
「っえ?マジ?」
「但し、この貸しはちゃんと返せよ」
そう言いながらエレベーターに乗る。
展望レストランは8階の最上階にあり、入り口で「予約していた太田です」と告げると窓辺の見渡しの良い席に案内された。
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