キミだけを見つめたくて
16
碧理への電話はたった2コールで繋がった。
『…もしもし』
「っあ、丸山さん?
今…大丈夫?」
受話器越しに相手の様子を伺う恒司だが、電話の向こう側は比較的静かである。
『うん、私の部屋だから大丈夫よ』
「そか。
早速本題なんだけど週末の件、日曜日でどうかな?」
遠回りをせず直ぐに本題に入った恒司だったが、間髪入れる隙もなく即答で碧理は「大丈夫よ」っと答えた。
その回答の速さに少し違和感を覚えた恒司だったが、芹澤と話しているうちにある程度決めていたのだろうと解釈する。
「時間はどうする?」
『そうねぇ……お昼前に集合して、向こうでご飯にしない?』
特に予定も立ててなかった恒司には都合の良い話だが、一応芹澤に後で承諾は取っておこうっと頭の中にメモをする。
「そうだね。じゃあ11時に臨海駅で」
「OK、11時ね。」
「なぁ……碧理」
少し間を置きつつ、呼び掛けた恒司は名字ではなく名前で呼び掛けた。
「ん?なぁに?」
唐突に名前を呼ばた碧理はどこか楽しげに答える。
「……いや、なんでもない」
なんでダブルデートなんて話に乗ったの?
っと聞こうとして、それが薮蛇だということに寸の所で気が付いた。
「なに、それ?」
っと笑いながら質問のようで質問になっていなかったので恒司も笑って誤魔化した。
「それじゃあ……恒司、当日楽しみにしてる」
少し間を置いて名前を呼ばれことで戸惑ってしまった恒司は、返事が出来なかった。
「じゃあね」
っと電話はすぐ切れてしまった。
「……まったく」
っと苦笑い気味に携帯を机に置き、心の中で相変わらず意表を突くんだからと付け加えて、席を立つ。
カレンダーに丸を付け、予定が入ったことを印す。
ふと、恒司はそう言えば……と思考を巡らす。
その結論に、週末が楽しみになったが、目の前に宿題があることも忘れなかった。
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