キミだけを見つめたくて
14
碧理を駅まで送り、そのまま傘も貸し恒司は帰路につくことにした。
ちなみに、恒司がわざわざ折り畳みではなく普通の傘を取りに行ったのは雨足が強く、到底折り畳みでは自分と鞄を守れないからであったのだが、碧理に貸してしまったので予想通り右肩がぐっしょりと濡れてしまった。
別れ際、碧理も気付いたらしく、風邪引かないようにね?と言われてしまった。
そんなわけで足早に、帰宅して先にシャワーを浴びていた恒司は携帯電話に着信があったことに気付くのが遅くなってしまった。
部屋に戻り、横向になった椅子に座り、鞄から課題を取り出そうとしたところで携帯電話が鳴った。
「ん?」
っと机の上を見ると着信やメールの受信を告げるライトが色鮮やかに光を放っていた。
普段、ここまで光ることがないので一瞬驚いてしまったが、そのまま手を伸ばし、お知らせ通知の内容を確認していく。
着信は芹澤と碧理から。
メールは碧理からだった。
メールには傘のお礼と、週末のことで話がしたいとのことだった。
週末に約束などしていないと記憶していたが、とりあえず碧理の用件はわかったので、まだ分からない芹澤に電話することにした。
トゥルルル…
トゥルルル………
『よう!丸ちゃんから連絡行ったかぁ?』
「………」
陽気すぎる芹澤のテンションに何の躊躇もなくプチっと無言で通話終了ボタンを押す。
すぐ芹澤からの着信が折り返される。
「………」
『いきなり切ることはないだろ!せめて用件をだな…』
無言で電話を取ったのにも関わらず、芹澤は1人でしゃべり続けている。
「っで?どういう悪巧みを考えてるんだ?」
『悪巧みとは失礼な!これでも色々と考えた結果なんだよ』
それを悪巧みと言うのではないか?と言う疑問は横に置いておくとして…
「じゃあなんで丸山さんの名前が出てくるんだよ」
芹澤から直接聞いたわけではないが、話の流れから彼が黒幕なのは間違いないだろう。
『それはだな…』
言い澱む芹澤を急かそうとはせず、恒司は座っていた椅子を180度回転させ、カレンダーに目をやる。
幸い今週末は両日共に空いている。
『だぁ〜もう!単刀直入に言うぞ!ダブルデートしよう!!』
さすがにこの回答は予想しておらず、思わず座っていた椅子から滑りそうになったが、なんとか踏ん張る。
(なるほどな…だから碧理と俺か…)
「ん?もう1人は?」
っと、ふと疑問に思ったことを聞いてみる。
『あぁえっと…一年の伊吹 って知ってるか?』
「確か新入生歓迎行事で俺たちの担当したクラスの子だよな?」
つい最近の行事を思い出す。
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