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キミだけを見つめたくて
13


「用意がいいのね。」

そう言いながら碧理は少し傘を持ち上げてみせる。

「いや、たまたま自分のロッカーに置き傘してただけだよ。」

そう答えたのだがまだ碧理は不満そうな顔で恒司を見ている。

「…ほらうちの学校、傘立てに置いてたらなくなるじゃん」

そう付け加えた恒司の言葉に、あぁなるほど、と納得した。

「っま、ロッカーが絶対安全とも限らないけどな。」

そう言うとお互い笑い合う。

「そう言えばさ、まだ呼び慣れない?」

「なにが?」

「恒司、碧理って」

先程、恒司が呼ばれたとき僅かに間があったのだ。

「あぁ…うん…まぁ呼び慣れないと言えば慣れてないよ?
でも…ほら一応、学校だったでしょ?」

学校とそれ以外という、所謂公私で呼び名を変えることにしていた。
別に恒司が提案したのではなく、寧ろその逆。碧理が言い出したのだ。
『恒司って呼んでいい?』っと。
ただ、学校で呼び名を突然変えると怪しまれるからっと言う事だったのだが…

「まぁ、そうだけどさ」

「なにか不満?」

「不満ってわけじゃないけど…」

―――なんでこうなってんの?

それが恒司の疑問だった。
あの日、フられたのは確かなのだ。
なのに名前で呼び合ってるそれが疑問なのだが…

「いいじゃない。今更ただのお友達ってわけでもないんだし」

「…まぁ、それもそうか」

「…それに私は名前で呼んで欲しいし」

っと囁くようにつぶやいた言葉は一応、恒司にも聞こえてはいたが、思わず「っえ?」っと聞き返してしまった。

「もぅ!なんでもない!」

っと拗ねた碧理を見て笑う恒司であった。









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あきゅろす。
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