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「フレイ!フレイ!脱出して!フレイ!」
アリシアは無線に向けて必死で叫んだ、返答は無い、その間にも、機体は落ちていく。
《援軍を要請しろ、救助隊もだ、急げ!!》
サンダーヘッドが救助隊を要請していたその時、雑音だらけで通信が入った。
「フレイ!」
「………アリシア…すまない…約束を守れそうにない…」
いつものフレイとは思えないほど、か細い声だった。
「フレイ脱出して!速く!」
「………もっと前に…言うべきだった…君と…君を…愛していると、一生そばに居てくれと…」
「君に夢を託す…もう…」
「脱出して!生きて戻って来て!約束したでしょフレイ!」
アリシアはスロットルを開け、フレイの機体に向けて進んだ。
「ああ…そうだな」
落下するラプターのキャノピーが飛んだ、フレイの姿が見えた、シートが飛ぶ。
「今…行くよ…アリシア…」
アリシアの視界が、白く塗り潰された。
新たにできた爆発の痕には、もう何も残されてはいない、白い光が消えた痕には、何も。
「…うまく聞こえないよ…フレイ…」
「どうして…どこにいったの?ねぇ…フレイ、もう一度私の名前を呼んでよ」
アリシアは血が出るほど唇を噛みしめた。
「フレーーーイ!」
アリシアの願いは、誰にも届かず、闇が開けていく空に、吸い込まれていった。
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