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どうやら乱気流に機体が飲み込まれたらしい、あまり強い気流の乱れではなかったらしく、すぐに機体は安定した。
敵である爆撃機にも乱気流の影響は及んでいて、被弾して推力が落ちているため大勢を立て直す事に時間がかかっている。
「フレイ!私がやる!」
《敵戦闘機全滅を確認!キャバリア良くやった!後は任せるんだ》
フレイは炎を散らしながら目の前を飛ぶ爆撃機から、向かって来るアリシアの小さな光に目をうつした。
「残念だがアリシアの到着は射程圏到達までに間に合わない」
「でも!」
非難するようなアリシアの叫び声、それが、何かを感じとったかのように変わる。
「フレイ待って!何を考えているの?やめて、馬鹿な事はしないで!」
アリシアの叫び声、それにサンダーヘッドも何かを感じ取ったらしい。
《たった今全軍に発射された弾頭の着弾地点及び飛行コースを割り出させている、首都の防衛軍に迎撃をお願いしよう、クロノス隊、撤退してくれ》
いや、そんなわけにはいかなかった。ほとんどの部隊はベルカに向かってしまって、首都には何も残されてはいないはずだ。
ましてや、残っているのはそのほとんどが好戦派の軍人達の部隊だ。
フレイの脳裏を様々な思い出が駆ける。
――アリシア…もしもの時は頼む。
フレイはスロットルをゆっくりと開け、機体を火を散らすB-2爆撃機の真上に進めた。
このまま残っている燃料を投棄する、これで引火させればたちまち爆撃機は核兵器を抱いたまま砕け散るだろう。
フレイは燃料投棄の赤いボタンに手を伸ばした。
「フレイ!危ない!」
その声と同時に、被弾を告げるランプがいくつも灯った、機銃弾がフレイの操縦するラプターの装甲を貫通する。
ほぼ真上から撃たれた弾丸は、ラプターと共にB-2の装甲にも風穴を穿った。
次の瞬間、燃料と炎が触れ合い、エンジンを包み込み、爆撃機を内部から膨張させ爆発した。
真上に、被弾したフレイを残したまま。
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