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《…………せよ……ルク…応答……よ……》
《……全部隊……せよ……繰り返す…》
「……こちら……部隊…ヘリは…繰り返す…ヘリは2機とも…だ…」
爆発の衝撃で舞い上げられた粉雪がサラサラと降り注ぎ、ゆっくりと、確実に視界がクリアになってゆく。
《……こちらバルスルクCIC…ヘリ部隊の状況を知らせよ》
「了解、こちらガンシップ、ヘリ部隊は2機とも無事。繰り返す、2機とも無事だ」
《了解、付近に敵の反応はあるか?》
「……いや…敵潜水艦はおろか、生態反応すらない」
《了解だ…ヘリ部隊は現高度を維持、帰還せよ…》
「………了解、帰投します」
ヘリ部隊が低空飛行で破壊された城から離れていく、吹き飛ばされた城からは炎が立ち上り、地下に蓄えられていたであろう弾薬類に引火し、唸りをあげて炎と煙が土砂と一緒に飛ばされた。
あの城の中にいたのは、奴らクーデター組織の仲間ではなかったのか?
仲間を殺してまで、撃墜しようとする考え方、組織としての繋がりは弱いようだ。
いつ後ろから撃たれるかわからない、そんな組織では、信頼関係を築けるはずがない。
亡骸になった城を見下ろし、フレイはそう思った。
………
……
…
空母に戻ったフレイ達を待っていたのは、見知らぬ数人の男達だった。
全員が真っ黒のサングラスをかけ、その瞳の見えない視線をフレイに向けている。
全員がパイロットスーツを着込んでいるが、胸のマークは見覚えがない。
彼等は敵なのか味方なのか、渦巻く不安を隠しながら、彼等の前に立った。
「敬礼!!」
中央の銀髪の兵士が突然叫んだ、同時に、彼等は背筋を伸ばした。
フレイも敬礼を返し、横目でちらりとアリシアを見た。
彼女も困惑したような表情をしている。
「自己紹介は…」
前を向き言いかけた言葉は、銀髪の兵士の上げた片腕により遮られた。
「必要ない中佐、みんな中佐の事は良く知っている」
「あんた…」
銀髪の兵士は、ゆっくりとサングラスを外した。
切れ長の細い瞳に、すっと通った鼻筋は、彼がモデルか何かか勘違いしてしまいそうだ。
「久しぶりだな、中佐」
「ああ、ヴォルフ…」
「私も忘れないでね」
その若い女性の声は、ヴォルフの後ろから聞こえた。
若干、ヴォルフの表情が曇る。
「舞さん!?」
「お久しぶり!アリシアちゃん!」
長く黒い艶髪をなびかせて、舞と呼ばれた女性は片手を上げた。
ヴォルフと舞、詳しい素性はまったくわからない傭兵コンビ、2人は僅かな時間だったが、ダリス島に来ていたことがあった。
酒場で乱闘騒ぎがあったのも、彼と死んだウォルトが原因だった。
結局、ウォルトが翌日操縦桿を握れないくらいにヴォルフにやられたのだが。
「まったく」
フレイはうっすらと、微笑を浮かべた。
「援軍か?」
「ああ、重盛に頼まれてな」
ヴォルフが顎で示すと、石像のように動かなかった男達が一歩、前に進み出た。
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