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《こちらバルスルク…ええ…艦長のスエルダ、攻撃隊リーダー聞こえているか?》

「こちら攻撃隊リーダー、重盛だ。
聞こえているぞスエルダ艦長」

《む…そうか、いや、しかし、まだ艦長という役職は私には荷が重いやはり別の誰かに任せたほうが》

「あんたが適任だスエルダ艦長。
ほら、しっかりしろ艦長。
ピンと背筋伸ばしてないと部下が不安がるぞ?」

アーンウルフが戦死した後、悲しみをこらえてスエルダは艦と乗組員を支えていた、その姿は艦長としても申し分なく、乗組員の推薦で、彼は臨時艦長としてバルスルクの最高司令官となった。
本人の意見は全く無視されていたが。

「こちら第7ヘリコプター攻撃連隊、強襲作戦を開始する。
しっかり守ってくれよ戦闘機隊」

「任せてくれ、そっちもお嬢をしっかり奪還してくれ」

ヘリボーン部隊からの『了解』との返事を受け取り、フレイは意識を警戒に集中させた。

今のところ、敵のレーダー反応は無い。
城門付近に停車していた3台の戦車はヘリ部隊が到着する前に撃破していて、それきり敵の攻撃はおろか、レーダー反応すら示さなかった。

「敵がすでにお嬢を連れて脱出してるって線はどうだ?」

「………………………」

「おい重盛……ノン?」

「………どうだろうな、それを確かめるために、突入部隊の作戦を成功させよう」

「了解、キャバリア、分散し警戒に入る」

フレイは編隊からパッと離れ、一度古城の真上をフライパスした。
相変わらず敵の反撃は見られない、雀蜂のようにワラワラと飛び出されるような光景は見たくないが、これでは本当に脱出してしまった可能性もあり得る。

発つ鳥跡を濁さず、フレイはふと、昔聞いたそんな言葉を思い出してしまった。

「よーし、これより古城に接近する。
頼んだぜ戦闘機!!」

フレイは大きく機体を旋回させ、レーダーをもう一度確認した。

「敵部隊の反応は…無しか」

突入部隊を乗せたヘリが雪塵を巻き上げながら、城の広場に着陸する。

「行けー!!行け!!行けー!!」

地上部隊を指揮する兵士が声を張り上げ、手を降って突入合図を送る。

ヘリから降りた突入部隊が素早く駆け、銃を左右上下に小刻みに動かしながら城門にとりつく。

その時だった―

「レーダーに反応あり、地上兵器だ」

部隊を下ろしたヘリが旋回して下がり、援護のために、兵器を満載したヘリが前に出る。

ドゴンと瓦礫を吹き飛ばして、煙りの尾を引いて戦車が飛び出した。
開いた穴から数台の戦車や対空兵器が現れる。

「まかせろ!!」

ヘリのパイロットは落ち着いて機首と砲門を疾走する戦車に向ける、すぐに機銃弾が撃ち出され、ロケットランチャーからもセミオートで砲弾が発射された。

ロケット弾は正確に先頭の戦車に複数直撃し、たちどころに火だるまに変える。

ヘリはホバリングしたまま機体を斜めに動かし、掃射を行った。
放たれた弾が爆発の炎と舞い上がった雪で敵部隊を完全に覆い隠す、攻撃を行ったヘリはすぐに機体を右旋回で離脱した。

門周辺にあったアーチ型の通路は完全に吹き飛び、発進した敵部隊は沈黙した。

《ブラヴォー2、チャーリー3、目標建物に侵入。
中は綺麗で暖かい、人間以外の敵が出てきそうだ》

直後、無線からは生の撃ち合いの音が聞こえ出した、音だけで戦闘の激しさが理解できた。

《こちらチャーリー3、現在ダイニングテーブルを挟んで戦闘中。
ブラヴォー2、右側の通路を行けばうまいこと挟み撃ちにできる、行け!!》

《ブラヴォー2了解、これより移動する…前進!!》

フレイは敵地上部隊を警戒して高度を上げ、重盛、アリシアと交互に城の上を何度となくフライパスした。

こうする事で、素早く敵地上部隊に攻撃を行う事ができる。

《……うわっ!!敵戦車が壁から突っ込んで来やがった、現在チャーリー3が階段を登って目標地点に接近中、航空部隊、あの戦車を潰してくれ!!》

「了解…クロノス2…FOX3FOX3」

ちょうど城の上を通り過ぎ、旋回していたアリシアが壁に穴を開けた戦車を発見し、ミサイルを発車した。

ミサイルは頭を突っ込んだ戦車の後方からぶつかり、見事に戦車を鉄屑に変えた。

《助かったぞ航空部隊、作戦を続行する》

「お前達は、いったい何に忠義を尽くしているんだ?」

フレイはヘリ部隊を執拗に狙う対空機銃に攻撃をくらわせた、機関砲をまともにくらった兵器は炎をまとって爆散する。

ヘリ部隊がロケット弾で攻め寄せる戦車を真っ向から叩き、重盛は低空から突っ込んで別の位置から発車した対空ミサイル群を破壊した。

「相棒…多分妹は中にいる、そんな気がするんだ」

重盛は機体をロールすると、雲を引いて垂直に上昇した。

《こちらチャーリー3、合流に成功、後方の部隊が敵と戦闘中。
だがもう予測目標地点だ、これより突入する》

フレイはアリシアと共に城のある山の下、地下から出撃した部隊を根こそぎ叩いた。

対地ミサイルで入り口を爆破して潰し、機関砲で地上兵器を破壊する。

「クロノス1より各機、機関砲の弾数残りわずか」

「クロノス2、こちらも残弾数残りわずか」


「フェアリー1、ミサイル残弾無し」

《現在作戦は順調に遂行中、あともう一息だ、クロノス隊!!》

フレイは放たれた対空ミサイルをフレアを射出して回避し、アリシアはそのSAMを機関砲で破壊する。

そろそろ城の広場も燃え盛る残骸で埋め尽くされそうだ、突入部隊がまだ手間取るのならば、今のうちに補給に戻った方が良いだろう。
《これより突入する…3…2…1…行け!!行け!!》

残った機関砲の弾薬を全て使って戦車を破壊したフレイは、固唾を飲んで、突入部隊の目標補足、成功を待った。

《こちらブラヴォー2、中で女の子を発見した、清楚な感じの女の子だ。
おいチャーリー3!女の子に自己紹介している場合か!》

「やった!!成功だ!!」


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