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重盛は合流地点にたどり着いた時に感じた、一応の安堵感が、粉々に崩れ落ちるのを感じた。

遠くからでも黒煙が二本登っているのがわかっていたし、無線でイエロースピリッツが撃沈された事も知っていた。

万が一の事を考えて、肝が冷やされる思いでいたが、舷側に大穴が開いただけの空母を見て、重盛はすぐに、捕らわれの身となった妹の救助方法を考えていた。

すぐにヘリに乗り込み、バルスルクのフライトデッキに降り立った重盛は、この船は見た目以上に被害が大きいと理解した。
そして、艦橋の一部がズタズタに引き裂かれ、大量の血が、細く流れている事に衝撃を受けた。

フレイ達はどこだ!?機体があるってことは、どこかにいるはずだが…。

重盛は周囲に視線を配った、どこか重苦しい雰囲気をまとったまま、クルー達が修復作業に取りかかっている。

「お、おい!フレイ―」

重盛は上げかけた手を止め、続く言葉を吐き出せ無かった。

フレイとアリシアが、そこにいた。
しかし、どこか様子がおかしい。
フレイはすっかりうろたえてしまっていて、すぐそばで、アリシアがかがみこんで泣いていた。

しばらく、呆然と立っていた重盛の隣を、棺桶に入れられたかつての艦長の亡骸が、運ばれていった。

アリシアや乗組員達が元気が無いのは、あの艦長が原因か。
重盛は一歩足を踏み出しながら、ぼんやりと、頭の片隅で理解していた。

「どうした?」

重盛はうろたえたままのフレイの肩を叩き、できる限り力強く言った。

フレイはアリシアに悲しげな瞳を向け、それから重盛に向き直り、アリシアに聞こえないように、重盛に起きたことを伝えた。

「あぁ…そうか…」

重盛はただ、そう言うしかできなかった。
これは下手に慰めの言葉をかけられない、無神経な慰めが、逆にアリシアを傷つけることになってしまうからである。
もし、ここで重盛が「アリシアが悪いんじゃない」と言えば、その言葉がアリシアの中で、両刃の剣となってのた打つ事になる。
哀れみと同情を受けるより、はっきりと卑下された方がマシに思えてしまう。
だから、フレイも何も言わなかったのだろう。

重盛は、それでもアリシアに励ましの言葉をかけたいのをこらえ、無理矢理に視線を移し、フレイに、先ほどの事を伝えた。

重盛は時間をかけ、ゆっくりと、慎重に言葉を選び、あらゆる可能性を視野に入れながら、一番は自分に言い聞かせるように話した。
フレイは、目を一瞬丸くしたが、すぐに怒りをあらわにした。

「なんだよそれ…フェアリー隊を仲間に引き入れ、利用して行動を制限するため、そのために奴らは…あんな少女を誘拐して…あんな場所に閉じ込めたのか!?」

フレイは全身から怒りを溢れさせて言った。
昔なら感情をできる限り抑えて、悲観的で、自虐的な考えで笑ったりしていたのに、今は感情を真っ直ぐ吐き出している。

このぶんなら、トラウマに悩まされる心配は無いな…

「取り戻そう!あんたの妹を!!」

フレイは重盛の両肩を掴んで揺すぶった。

「今すぐにでも行って、奴らを蹴散らそう!!」

「待って…」

その声に、フレイの勢いが止まった。

見れば、アリシアがゆっくりと立ち上がる所だった。
泣いたためか、腫れぼったい目許に、涙の流した跡を残したまま。
手を伸ばし、フレイの手に優しく重ねた。

「妹さんを取り戻すなら、少し時間を置いた方がいい」

アリシアが涙を袖で拭った。
重盛はいつも以上にこの二人が好きになった。
自分が辛くても他人の事も考えれる優しいアリシアに、向こう見ずだが不器用な優しさを持ったフレイ。

こんな友を持てて俺は幸せだ。
すまないな、二人とも。

後で必ず、本当の事を話すから。



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あきゅろす。
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