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「グランダーめ…こいつァとんでもねぇ事してくれやがって、オーシアに対する立派な叛逆行為だぜ」

ルディ曹長が顎を撫でながら、浮かび上がったディスプレイを見て言った。

唯一焼けずに残った格納庫内、そこに残った一台の研究機材を見ていた。

格納庫はミサイルの直撃を受けていて、他の機材や端末装置は吹き飛んで跡形も無かった。

運良く残った機材を見つけ出したルディ曹長は、焼き切れたコードを無理矢理修復し、ひびがわずかに入った液晶を睨んでいる。

そこに表れていたのは機体情報と搭乗者プロフィール、その日に行われたテスト内容の詳細だった。
それだけなら何もない普通の実験データーだ。
しかし、やはりあのブラックボックスは情報を発信していたのだ。

それは実験記録なんかではなく、詳しい座標と速度、高度を記したものだったのだ。

これがあれば全ての部隊の行動を事細かに知る事ができる。
もしこれが敵国に流されていていたのだとしたら、敵の戦略は大幅に広がる。

もしオーシア軍の全ての機体にこの装置が装着されていたのだとしたら、ユークトバニアがオーシア本土に侵入するもの容易になるはずだ。

だから、アピート国際空港とバーナ学園都市は襲撃を受けたのだろう。

「なんてことだ…」

ルディ曹長が情報端末にデーターをコピーしていく。
ずさんな情報管理なグランダー職員に感謝しながら、フレイはルディ曹長の操る端末が映し出す液晶を見つめた。

「………おい!コイツは!」

フレイは身を乗り出し、あるデーターを表情するようにルディに言った。

そして、映し出されたのは数々の作戦情報とグランダーからの指令、そして、恐ろしい兵器情報だった。

―“G計画”―

そう名付けられた計画、それはオーシア、ベルカ間合同の新型大量殺戮破壊兵器の開発だった。

戦術核弾頭からレールガン、戦闘機、レーザー兵器まで、ありとあらゆる兵器。
それらの情報が、今目の前にある。

「コイツ…基地を襲った…」

移し出されたのは重巡航管制機“アグニバス”(XB-J)だった。
AAガン×10 SAM×15 ASM×2 ICBM×1 SLBM×1

「単騎で陸海空の全ての兵器に攻撃ができる…おまけに弾道ミサイル発射機能付きと来たもんだ」

ルディは素早くデーターのコピーを始める。
これは間違い無く、オーシアの危機的状況だ、鬼のハーリングが進めて来た平和政策をひっくり返そうとした連中の、クーデター。

「コイツを本部に提出して、好戦派の連中を驚かせてやろう」

ルディは意地悪そうな笑みを浮かべて言った。
しかし、本部に提出しただけで解決するだろうか。
むしろ封殺されてしまうのではないだろうか。

「そうだな…本部より、大統領に送りつけてやる必要がある。肝心のハーリング大統領が果たして大統領府にいればの話しだが」

そう言ったのは鉄仮面、ハーベット大佐だった。

「心外だな、忠誠するべき祖国が、裏でこんな事をしていたとは」

「グランダーは…オーシアはベルカと繋がっていますね。」

ハーベット大佐は頷いた。
そして大佐は続けるようにルディに促した。
画面がスクロールして行き、実用化されていない、まだ計画中の兵器群が表示される。

そして画面の一番下、驚くべき文字が刻まれていた。

―アップルルース

忌々しい、好戦派の副大統領の名前。

「あの糞野郎!」

その言葉にはフレイも同感だった、奴がグランダーに協力している。
これは立派な証拠になる。こうも簡単に、しかも舞台裏に気がつけるとは。

しかし、自分達がその兵器開発に協力していたとは、知るよしも無かった。
そう思うと、やるせない気持ちになる。

「これは基地にいる全員に伝えよう。私はブリーフィングルームに集まるように指示を出す。ルディ曹長はコピーを急いでくれ」

ハーベット大佐は怒りを抑えながら、足早に基地に向かった。
あの鉄仮面とは思えない雰囲気だ。

ともかく、今はオーシアの企みを阻止する必要がある。
あの重巡航管制機が爆撃したのは、恐らくこの情報を破壊するためだったのだろう。

「くそ…」

コピーが完了したルディは、ROMをケースにしまい込んだ。

「さぁ、ブリーフィングルームに急ごう」


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あきゅろす。
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