8 「この格納庫はもう駄目だ! 総員基地の中に戻れーっ!」 整備班長が、鳴り止まない爆音に負けないよう、精一杯声を上げて叫んだ。 その声を合図にしたかのように、ハンガーの一部がさらに崩壊し、鉄が捩り切れ、屋根を支えるパーツが剥がれ落ちてしまった。 「みんな急げー!巻き込まれるぞーっ!」 落下する金属の音にかき消されまいと、フレイも避退を促した。 そうだ、まずは仲間の安全を優先しよう。 今は自分のできる事を精一杯やるんだ! フレイは負傷した兵士を支える味方に駆け寄り、フレイ自身も彼を支えた。 すでに格納庫には火が燃え移り、倒壊は時間の問題だった。 フレイとその兵士達が格納庫を抜け出した直後、鉄のフレームが数本倒れ、入り口に鈍い音を立てて落下した。 あと少し遅れていたら、ペチャンコになっていただろう。 しかし、安心するのはまだ早かった。 「敵弾!伏せろーっ!」 味方が指差した方向に、咄嗟にフレイは視線を送った。 そこに見えたのは薄い排気煙を吐き出しながら突き進む、オレンジ色の光点。 「まずい!」 フレイは負傷した兵士の肩を掴み、その場に倒れ込んだ。 くぐもった声が聞こえたが、それもすぐに、次の爆音にかき消されてしまった。 「ぐわあぁっ!」 数人の叫び声と共に、隣の格納庫が対地ミサイルに吹き飛ばされた。 一瞬の間に起こった強い光が付近にいた仲間達を巻き込んで行く。 爆風が破片を撒き散らし、燃え盛った小さな鉄屑がフレイにも降り注ぐ。 「おい!しっかりしろ!立て」 すぐに倒れた人間を味方が叩き起こし、避難を再開する。 フレイはその場にしゃがんだまま、空に目を向けていた。 [*前へ][次へ#] |