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2010年11月5日 PM 23:45

すでに消灯時刻を過ぎており、フレイ達には安らかな時間が訪れていた。

赤道に近いこの孤島だが、冬はさすがに冷え込み、気温は氷点下にまで下がっている。

そのため、窓ガラスには雪の結晶を思わせる氷がへばりつき、吐き出される息は白い。


時計の時を刻む正確な音だけが部屋に響くなか、全長200m全幅500m、全高50mの超巨大航空母艦、通称「アグニバス」は凍てつく空に暗い影を落としていた。
垂直尾翼に黄色でペイントされたVの文字は、アグニバスシリーズの旗艦である事を証明している。

だが、このアグニバスは本来、オーシア領空を飛ぶはずは無かった。
言わば、訳ありの機体。

15年前、世界を戦火に巻き込み、そしてその業火を自らにも放ったベルカ公国。
このアグニバスは、今は無き南ベルカ国営兵器産業廠によって製造された機体。
言いかえれば、ノース・オーシア・ゲランダー・インダストリーの私物。
それが今、ゆっくりとダリス島上空を通過しようとしていた。

そして、アグニバスの漆黒の巨躯から、6つの機影を吐き出された。

アフターバーナーの光が夜空に陽炎を残す。

凍てつく大気により、澄んだ空気は月を囲み鮮やかな色合いを見せていた。

当然その柔らかな光は居住区で睡眠中のフレイにも届いていた。
月は毛布を深くかぶったフレイの横顔を照らしていたが、真っ白な月の光が突然何かに遮られ、辺りは漆黒の闇に包まれた。

「………ん」

フレイは音も無く起き上がった、何も見えない世界に異変を感じ、窓に目を向ける。

しかし、そこは世界を黒く塗りつぶしたようで、月明かりはおろか、星すらも見えなかった。

基地に設置された白光が、少ない光量でエプロンに光を届けていた。



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