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茜色に染まり、どこまでも続く空を、フレイは輸送機の小さな窓から眺めていた。
浮かぶ雲は少なく、傾いた夕陽が照らす陽光はC-17の装甲を煌めかせる。
ふと、反対側の窓に視線を投げかければ、スカイブルーの機体色をオレンジ色に染め上げ、見事なコントラストを浮かび上がらせたF-22が護衛役を務めている。
垂直尾翼には地獄の死刑執行人を思わせる、見慣れた断罪者のエンブレムが描かれている。
輸送機に設置されている座席には、フレイを除けば誰も同乗してはいなかった。
そのためか、4つのエンジンが駆動する静かな唸り声の他は、全くの無音だった。
コクピットへと続く扉は閉ざされており、中の様子は全く伺えなかった。
「はぁ…」
フレイは小さくため息を吐いた。
夕陽の優しい陽光は機内を彩り、心を満たしてくれる。
しかし、その色が、フレイをある種の嫌悪感をもたらしていた。
確かに機体を失った事は悲しい、しかし、フレイにとっての今の世界はこんなにも平和で優しかった。
こんな綺麗な夕陽を見れる世界でも、この海と空の続く先では、何万ガロンもの血と涙が流れている。
こんな事を言ったら、アンニュイ入ってると、基地の連中に笑い飛ばされるだろう。
そんな光景を思い浮かべ、フレイは自嘲めいた笑みを浮かべた。
なんにしても、フレイは若干の安心感があった。
自分の家とも言える場所に帰れる事の他に、機体を失ったことで戦争から、人を殺すことから離れれる気がしたから。
自分はもうすでに、何人も人を殺して来ていると言うのに…
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