suspicion
―オーシア連邦 オーレッド内空軍基地―
「おい…酷いな」
整備兵の1人が、格納庫に牽引されて来るF-22を見上げて言った。
垂直尾翼には断罪者のエンブレムが描かれている。
左側のエアインテークは砕け、鉄が黒く焦げている。
左主翼パネルは盛り上がり、歪んだソレは所々が欠けていた。
「前縁フラットが根元から折れてやがる…ずいぶんボロボロだな」
スカイブルーの機体はエンジン付近が白くなっている。
消火剤を撒かれたのだろう。
「…機銃を受けた痕だな、これだけの損傷で帰ってくるなんて、いったいどんなパイロットなんだ?」
「おいベニー、こいつ治せって言われてもさぁ。
内部もそうとうやられてんぞ?
オーバーホールしたって無駄だぞ?」
コクピットで作業をする、同じ整備兵が声を上げる。
「この機体はもう駄目だな、お疲れさん」
そう言って整備兵は、ラプターの装甲を撫でたのだった。
………
……
…
「ですから、オーシア国籍の飛行隊に攻撃を受けたのです」
「無線記録を調べて下さい、落とした機体の残骸はまだなんですか?」
薄暗い軍法会議室、フレイとアリシアが、陰気な高級将校の前で、もう何度となく繰り返した事をまた繰り返していた。
「ですから8492飛行隊と名乗る、オーシア国籍をつけたユーク人による奇襲攻撃ですよ」
「84928492、君達もそれかね!一体君達の言う8492飛行隊とは何者なんだね?」
年老いた将校が、うんざりしたように言い放った。
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