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敵機とすれ違った時、確かな手応えを感じた。
ラプターの放った弾丸は、斜めからイーグルを抉り、すれ違いざまにイーグルは爆散した。
内部から膨張するようにはじけた炎は、一瞬、夜の闇で薄暗くなったコクピットを照らした。
しかし、秒間15発。
毎分4000発の勢いで吐き出される20o弾の牙は、確かにフレイにも及んでいた。
それも、かなりの損害をもたらして。
「やってくれる」
PCL、パワーコントロールでエンジンの駆動を切ったラプターは、僅かに速度を弱めながら、大地に向かって落下している。
高度がぐんぐん下がり、空気抵抗が増していく。
電源の落ちたコクピットは、静寂に包まれていた。
しかし、酸素の供給が止まった今、フレイはただ、耐えるしか無かった。
風を切る音と、鉄が軋む音。
落下している時間が、やけに長く感じられた。
耐えがたいGに必死で耐える中、涙で霞む視界の中、フレイはPCLを上げ、できる限り急いで機体を立ち上げた。
戦術ディスプレイに光りが灯り、パイザーに状況が照射される。
空気供給も再開され、危惧していた状況はなんとかなりそうだった。
後はエンジンを始動させるだけ。
「かかってくれ…」と心の中で唱えながら、フレイはスイッチを押し上げて行った。
―クオォォン
「よしっ!」
エンジン音が、これほど頼もしく聞こえたのは初めてだった。
高度計は14800を示している、もうじき雲まで届くのだ。
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