3
「あ゛ーっ゛!なんでよりによって俺なんだぁ〜!」
ウォルト中尉は両手で頭を抱え、天井から静かに風を送るファンを眺めた。
「いつもウォルト中尉の負けだな」
「何っ!?なら今度はポーカーで勝負だ!
リョウスケのポーカーフェイスをズタボロにしてやんよ!」
「ウォルト君…君は何を言っているんだい?
さて、僕は用事があるので少し席を外すよ」
リョウスケは医学書を閉じると、片手を挙げて席を立った。
にこやかな笑顔を振りまいて、カウンターに歩み寄る。
「フレイ中佐…お聞きしたい事が…」
リョウスケ大尉はフレイの後ろに立つと、周囲から見えないように、少し危機感にも似た笑みを作った。
彼の考えてる事は、多分あの事だろう。
「ついて来てくれ…ノンさんとアリシアも」
「わかった」
三人は静かに、酒場を後にした。
後ろではウォルト達が、新しくゲームを始めていた。
……
…
「リョウ…君の言いたい事は…多分今回の戦争の事だな?」
「そうです、ユークトバニアとオーシアは確かに冷戦状態にありました。
しかしそれは互いの軍事力競争にすぎません、ニカノール首相とハーリング大統領がそれぞれ国の代表となってから、軍縮に進み二国間は平和への道のりを歩み出しました」
「私は二人が手を取り合い、平和への道のりを歩み出した瞬間をその目で見ました…」
リョウスケは一気にまくし立てる。
いつも冷静な彼にしては、とても感情的になっている。
「そしてユークとオーシアは共同の国際宇宙ステーションまで作り出し、白い鳥を平和の象徴とした…だろ?」
ノンがリョウスケの肩に手を置く、リョウスケが絶望感を漂わせる瞳でノンを見やる。
その視線をノンは真っ向から受け止めた。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!