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「信頼よりもっと強い、別の感情があるんじゃないのかい?」

整備士は褐色の肌を輝かせ、アリシアの額を指で弾いた。

「いたっ」

「こらこら、ルディ曹長」

「いや、だがなフレイ。俺は本当の事を言っただけだぞ、中佐もまんざらでもないだろ?」

「まあな」

「フレ……中佐!」

アリシアが顔を真っ赤に染めながら、震える手でフレイの上着を摘んでいた。
整備班の間で笑いが起こる。

「はははははは、お似合いだぞ中佐!」

「お帰り中佐!」

「機体の方、愛情込めて整備しとくぜ!」

整備班が手にした工具を高く掲げる。

「ああ」

フレイは微笑んだ。
同時に彼の心を暖かいものが満たして行く。
ここでは地質的、階級の効力は存在しない。
基地司令官や本国からの高級将校訪問時は軍の“それ”に習って皆が動くが、普段は皆が友達のように接している。

そのため、この基地は笑顔が絶える事が無い。

「よろしく頼む」

「まったく…もう…」

フレイは真っ赤になったアリシアを連れて、格納庫を後にした。

自然に浮かんだ笑顔、戦闘の疲れなど、二人は忘れていた。

………

……




搭乗員宿舎から少し離れた、小さな木製の小屋。

離れていても騒ぎ声が聞こえるこの場所に、基地司令官に申告を終えたフレイとアリシアは訪れた。

―ギィ

軋んだ音を立てて、錆び付いた扉を開ける。
内部の喧騒が一層強く聞こえる。

「よし、kingのトリプルだ!」

「あーっ!テメェ!
またかコノヤロー!
ロズのチキン!だからテメェは蒼なんて名前つけられんだ」

「どうすんだい?ウォルト中尉?」

「くっそぉーパスだぁー!」

「ならこいつでどうよ?」

「あぁニコの野郎、Aのトリプルだとぉ?」

「じゃあ僕は…これで決めさせてもらうよ。
切り札は最後に出してこその切り札なんだ!」



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あきゅろす。
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