1
「信頼よりもっと強い、別の感情があるんじゃないのかい?」
整備士は褐色の肌を輝かせ、アリシアの額を指で弾いた。
「いたっ」
「こらこら、ルディ曹長」
「いや、だがなフレイ。俺は本当の事を言っただけだぞ、中佐もまんざらでもないだろ?」
「まあな」
「フレ……中佐!」
アリシアが顔を真っ赤に染めながら、震える手でフレイの上着を摘んでいた。
整備班の間で笑いが起こる。
「はははははは、お似合いだぞ中佐!」
「お帰り中佐!」
「機体の方、愛情込めて整備しとくぜ!」
整備班が手にした工具を高く掲げる。
「ああ」
フレイは微笑んだ。
同時に彼の心を暖かいものが満たして行く。
ここでは地質的、階級の効力は存在しない。
基地司令官や本国からの高級将校訪問時は軍の“それ”に習って皆が動くが、普段は皆が友達のように接している。
そのため、この基地は笑顔が絶える事が無い。
「よろしく頼む」
「まったく…もう…」
フレイは真っ赤になったアリシアを連れて、格納庫を後にした。
自然に浮かんだ笑顔、戦闘の疲れなど、二人は忘れていた。
………
……
…
搭乗員宿舎から少し離れた、小さな木製の小屋。
離れていても騒ぎ声が聞こえるこの場所に、基地司令官に申告を終えたフレイとアリシアは訪れた。
―ギィ
軋んだ音を立てて、錆び付いた扉を開ける。
内部の喧騒が一層強く聞こえる。
「よし、kingのトリプルだ!」
「あーっ!テメェ!
またかコノヤロー!
ロズのチキン!だからテメェは蒼なんて名前つけられんだ」
「どうすんだい?ウォルト中尉?」
「くっそぉーパスだぁー!」
「ならこいつでどうよ?」
「あぁニコの野郎、Aのトリプルだとぉ?」
「じゃあ僕は…これで決めさせてもらうよ。
切り札は最後に出してこその切り札なんだ!」
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!