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ミサイルを発射したフレイは、スロットルレバーを戻し、エアブレーキを展開した。

垂直尾翼のラダーがそれぞれ外側を向く。
空気抵抗が増大し、機体の速度が急速に落ちる。

「くっ…あぁっ…」

フレイは度重なる強力なGに、何度も気を失いかけていた。

それでも、必死で首を振って、気を保っていた。

覚悟を決めて、操縦桿を引く。

「…あがれっ…」

座席右側、コントロールパネル付近にある操縦桿を、力一杯引き上げる。

「…っはぁ…くそ…上がらない…」

フレイは操縦桿を両手で握った。
水平尾翼がほんの僅かに動いただけで、強烈な嘔吐感に見回れる。

機体の振動が不気味な、鉄が捻れる音と共に広がり、左翼の前縁フラットが外れ落ち、主翼パネルが歪み、割れながら剥がれ落ちる。

―ビビビビビビビビビビ!

「くそっ!計器が狂った」

フレイはコンソールを殴りつけた、拳に鈍い痛みが広がる。

海面が眼下に広がる、減速力は足らず、今機体を上げなければフレイは機体ごと砕ける。

「…くっ」

何も考えずに、ただ操縦桿を引く腕にだけ力を込める。

視界が霞み、何も見えなくなる。

「まずい…ブラックアウトだ…」

目を開いていても、何も移らない。

しかし、機体がもう真下を向いてないことだけは確かだ。
それだけは体の感覚で理解できる。

フレイは操縦桿からゆっくりと力を抜いた。
そのまま手探りで酸素マスクを外し、ヘルメットをむしり取った。



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あきゅろす。
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