10
ミサイルを発射したフレイは、スロットルレバーを戻し、エアブレーキを展開した。
垂直尾翼のラダーがそれぞれ外側を向く。
空気抵抗が増大し、機体の速度が急速に落ちる。
「くっ…あぁっ…」
フレイは度重なる強力なGに、何度も気を失いかけていた。
それでも、必死で首を振って、気を保っていた。
覚悟を決めて、操縦桿を引く。
「…あがれっ…」
座席右側、コントロールパネル付近にある操縦桿を、力一杯引き上げる。
「…っはぁ…くそ…上がらない…」
フレイは操縦桿を両手で握った。
水平尾翼がほんの僅かに動いただけで、強烈な嘔吐感に見回れる。
機体の振動が不気味な、鉄が捻れる音と共に広がり、左翼の前縁フラットが外れ落ち、主翼パネルが歪み、割れながら剥がれ落ちる。
―ビビビビビビビビビビ!
「くそっ!計器が狂った」
フレイはコンソールを殴りつけた、拳に鈍い痛みが広がる。
海面が眼下に広がる、減速力は足らず、今機体を上げなければフレイは機体ごと砕ける。
「…くっ」
何も考えずに、ただ操縦桿を引く腕にだけ力を込める。
視界が霞み、何も見えなくなる。
「まずい…ブラックアウトだ…」
目を開いていても、何も移らない。
しかし、機体がもう真下を向いてないことだけは確かだ。
それだけは体の感覚で理解できる。
フレイは操縦桿からゆっくりと力を抜いた。
そのまま手探りで酸素マスクを外し、ヘルメットをむしり取った。
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