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脳内モルヒネ
歯茎にまつわるエトセトラ

おっす、俺、貫目伊都!
ぴちぴちの17歳DTボーイだぜ☆

今日も元気に事故にも合わず無事学校に来ることができましたーー!
っしゃー!ひゃっほー!あとは想い人の今井君を一目でも拝めれば今日も一日頑張れるに違いないぜぇぇぇぇ!!


「おはよー」

教室に咲いた一輪の華!
麗しの君、今井君のお出ましだぁ!
イエーッス!なんてグッドなタイミングなんだyo!憎い人!
はあぁぁぁん、今日もまぶしく輝いてるしぃー☆
ぴょこんとはねた寝ぐせの髪すらI・TO・O・SHI・I・ZE!

よし、今井君が取り巻きに囲まれる前に急いで挨拶するんだぁ、ぴゅん!

「今井くぅぅぅん、おっはよぉぉー!」

俺が声をかけると、こちらを見てふわりと優しく微笑んだ今井君はおっそろしいほどに天使だ。
ふあーん、目がくらむぅぅ!(そして乙女モード突入ぅぅぅ)ラブミードゥ!

「おはよ。貫目はいつも朝から元気だよなぁ。俺低血圧みたいでなんかまだボーっとしてるよ」
「え、そうなんだ!?でも今井君からキラキラオーラ半端なく溢れ出てっけど!?全然問題なっしんぐじゃね!?」
「はは、ほんとー?」

笑うと眉間の辺りがくしゃりとなってデラ可愛いしぃぃぃぃ。
あー、やばい息苦しい、今井君を目の前にすると動悸息切れで呼吸もままならないぜ!

「ねぇ!ねぇねぇ今井君っ!突然だけど25日って歯茎の日なんだけど知ってた!?」
「ん?何それ」
「俺もよくわかんないけど、とにかく歯茎の日らしいよ!歯茎を大事にしよーねって日らしいんだ!」
「へぇ、そうなんだ?」
「うん!だからさ、俺が今井君の歯茎チェックしたげるよ!ちゃんとピンクで健康な歯茎をしているか触診してあげるよ!だからさ、口開けてみて!?」
「えー、口ん中見られるのなんか恥ずかくね?」
「は!?全然恥ずかしくなんかないよ!ていうかこちらは歯茎マッサージも辞さない構えだけどね?」
「ははは、貫目って変な奴ー」
「さぁ、さあさぁ今井君、口を今すぐ開けてくれYO!さぁ!」
「こらぁ貫目ぇぇーー!!貴様今井に何をしようとしている!?」
「ぐあぅっ」

ぐいぐいと今井君に詰め寄っているところへ、がこーんと後ろから思い切りゲンコツをくらいその場に蹲る。
い、痛すぎて動けない。
こんな容赦ない振る舞いをする人間は奴しかいない。

「…篠山ぁ、めっちゃ痛いんだけどー」

涙目で見上げると、 予想通りの篠山が仁王立ちで俺を睨みつけていた。

「自業自得だ。お前はもう今井に半径50メートル以内に近づくな!今井が穢れる!」
「はは、50って。教室に収まらないじゃん?」
「あ、今井君、冷静なコメントありがとう★」
「…すまないが、今井はちょっと黙っててくれ」

のほほんとした天然ハーブ少年今井氏を優しく諭すと、篠山は俺の方へと再度向き直る。
汚いものを見るような冷たい目に、俺は身も心も冷え切って涙目だよ!!

今井君と篠山は小学校からの幼馴染みなんだって。
この人、生徒会役員もするほど優秀な男だけど、今井君に対しては超絶過保護でネジ飛ぶ感じがやばすぎる。(ん?お前が言うなって?なんだとこいつぅ)

基本今井君に群がる人間には厳しい態度をとるが、俺に対してはひと際キツくなるんだよな…。
はー、全く小姑ってうざいし扱いが難しい!

「篠山ー、俺さぁ、今井君とちょっと仲良くしたいなと思ってるだけなんだけどぉ?」
「歯茎がどうのこうの言ってるお前の”ちょっと”なんて信じられるか」
「(あら聞いてたのね)…ほら、咥内って性感帯だって言うじゃん?だから、」
「死ね!今すぐ死ぬがいい!!」
「うわーーん、ひどいよぉ!生徒会の人間がそんなことしていいのかぁぁ!?」
「自衛行動だ。問題ない」

げしげしと蹴られ、慌てて今井君の背後に隠れる。
俺は頭がいいのでどこが一番安全なのかちゃんと分かってるんだぜ!
いじめられた子犬のように振舞っていると、今井君がよしよしって頭を撫でてくれた。
…ちょ、俺を昇天させる気!?もうっ!この純真天使さんめぇーー!!はぁはぁはぁ!

「篠山、貫目が可哀想じゃん。あんまりひどいことすんなよー」
「今井!こいつを甘やかすなっ」
「はは、甘やかしてなんかいないよ、なぁ?」
「今井きゅん…!」

もうっ!やだやだやだ!エンジェル今井が激しく優しくてツライっ!
いいから抱いて!
今すぐ俺と結婚してぇぇぇぇーーーん!!!

「今井君!その優しさで俺の歯茎マッサージを受け入れてく、ぎゃふっ!」
「貴様、まだ懲りないか」
「痛い痛い!ちょ、篠山痛いってば!」
「はーい、貫目はそろそろ落ち着けー?篠山もほどほどにな」
「中津ぅ…」
「あ、中津おはよう」
「はよ、朝から騒がしくて大変だな」

篠山の鉄拳制裁を受けていた俺を救ってくれたのはクラスメイトの中津だった。
中津はいつもほんのり暴走しがちな俺をフォローしてくれる素敵な親友なんだぜ!
同級生とは思えないほど落ち着いた雰囲気の中津は今井君に劣らないほどのイケメン様だ。
ついでに言うと篠山もまぁまぁ整った顔立ちをしている。(うるさい小姑だから眼中にないけどね!)
このクラスは明らかに美形がそろっているイケパラクラスで、俺は毎日ウハウハしているのであった。

今井君の歯茎を拝むことは出来なかったが、朝から沢山接触できたのでとりあえず引きさがることにした。
ま、次の機会に再チャレンジだな!

「中津助かったぁ。ありがとな。篠山まじ怖ぇよー」

自席に戻り、中津に礼を言いに行くと、親友は呆れた顔で俺を見た。

「お前さ、馬鹿すぎてほんと心配になるわ」
「え、そぅ?」
「つかずっとお前らのこと見てたけど、なんなの歯茎の日って。てか今日は何日だよ」
「えーっと、今日は…12日?」
「歯茎の日は何日だって言ってた?」
「25日だよ!」
「…」
「んん?」
「ばーか」

はぅっ!!

「し、しまったぁぁぁぁぁぁーーーー!!」
「ほんと馬鹿だね」
「25日じゃないから今井君は歯茎見せてくれなかったのかなぁぁぁぁ!?」
「いや、そういうことじゃねぇから」
「え、違うの?」
「ちげーだろ」

えぇー、違うの?

「じゃあいつになったら俺は今井君の歯茎見れるんだよ!」
「さぁ、そんな日は一生こねぇんじゃね」

なぁんでだよぉぉぉぉぉおぉ!?

「そんなん俺的にマジでありえないし!どうしてくれんの!?」
「俺にキレんなよ。つかなぜそこまで歯茎に執着する?」
「…」

そういやなんでだろ。
確かにそこまで今井君の歯茎に固執する理由って、特になかったわ。

「あー…っと」
「ん?」
「なんか俺、急激に冷静になってきたかもー。もしや急速冷凍されちゃった感じ?え、なんなの中津って俺の冷蔵庫なの?」
「…ほんと、お前はさぁ」

はーーーーーぁ、と長い溜息をつかれてしまった。
てへぺろ。
やっぱ持つべきものは冷静な友人ですなぁ。


そんなわけで歯茎パニック(中津曰くセクハラ)はこれにて終幕となった。
ちゃんちゃん。



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