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おとなりさん
となりの不良

「あれ、カナメ珍しいね、朝からいるなんて」
「…あぁ」

今日はなんとなく早く目が覚めてしまい、いつもより早く家を出た。
きっと教室には誰もいないだろうなぁと思っていたけど。

後ろの窓際の席で気だるげに机に伏している男がいた。
水田要。金色に黒のメッシュがところどころ入った髪、着崩した制服。顔は整ってはいるものの、目に迫力がありすぎて近寄りがたいオーラを放つ、どっからどう見ても不良様。

本当ならこのテのタイプには絶対近づかない俺だけど、カナメだけは別だ。
だってこいつは小学校からの腐れ縁で、家も隣同士の幼馴染だからね。

…小学校までは普通の奴だったんだけどなぁ。まあ、もともと愛想はなかったけど。
やっぱ両親の離婚が影響しているのだろうか。
俺にはそんな態度全然見せたりしなかったけど、本当は寂しかったのかもしれない。
中学に入ってからはどんどんそっちの道へと突き進んでいってしまったわけだが、もともと頭の出来は良いらしくテストはいつも上位だし、俺と一緒にいる時は昔と変わらない態度だし。
まぁ別にいいか、なんて暢気に思っていたりする。


「…どした?」

整った奴の顔が今日はいつにもまして不機嫌に歪んでいることに気づき声をかけると、ぎろりと睨まれた。こわっ。

「お前のせいでイラついて寝れなかったんだよ、くそが」
「え、えぇっ!?俺のせい?なんでだよ!」

俺なんかしたっけ?
そもそもここ何日かカナメに会ってないし。(サボり魔だからね、この人)

「女と歩いてただろ、昨日…。お前、今度はアレとつき合ってんの」
「あぁ!そうそう。実は先週告白されたんだよね〜。ユミちゃん!かわいかっただろ?へへへ」
「へへへじゃねーよ、ふざけんな…。ちょっと目を離すとすぐこれだからな…」

はぁ〜、と深いため息をつくカナメ。
??
てか別にいいじゃん、俺に彼女できたって。そんで一緒に帰ったってさ。
なんでお前がそんな顔するわけ?

「ナニ、それが寝れなかった原因?意味わかんねぇ…」


…はっ!
え、もしかして。
もしかして!?

「…え、ちょ、カナメ!?もしかしてユミちゃんのこと気に入っちゃったとか?」
「誰があんなブス…。マジで言ってんの?」
「おぉい!ユミちゃんはブスじゃねーよっ!てか失礼じゃね?人の彼女に対してさーー」

俺が横でぷんぷんしていると、更に睨まれてしまった!
や、さすがに迫力ありすぎだからね!怖いデスからね〜。嫌な汗かいちゃうよ〜。

「どうせ、大して好きでもないくせに告られたからって喜んで付き合ってるだけだろ。でもそんなにハマれなくて最終的に“私のこと好きじゃないなら別れよう”って言われてフラれるパターン、何回やれば気が済むんだ、あほか。てめぇ少しは懲りろよ」
「…っ」

一気にまくし立てられて俺はぐぅの音もでません…。

だって、だってさ〜、やっぱ告られたら嬉しいじゃん!
そんで一緒にいたらそのうち好きになるかもって期待するのは、イケないことか?
(まあ、結局好きになる前にフラれちゃうんだけどさ…)

てかなんでここまでけちょんけちょんに言われなきゃならないんだよ〜!?

前にいるカナメを恨めしげに見上げると、呆れたような目が俺を見つめていた。
…うぅ、なんだよ、ちくしょう。

「アキ、お前今すぐあの女と別れろ」
「…は?何言ってんの!?やだよっ!」
「どうせすぐフラれるんだから、同じことだろ。つーか、もうお前が馬鹿すぎて我慢ならねぇ」
「ひどっ!」

馬鹿ってなんだよ、馬鹿って!

「もう、いい加減待つの疲れたし」
「は?どゆ意味?」

待つって何を?

俺が問うと、カナメの腕がにゅっと伸びて、胸倉を掴まれた。

ちょ、え。なんなの!?

「なになになに!?暴力はんたーーい!!」
「…俺と付き合えよ」
「……………へぁ?」

な、に…言ってんの、このヒト。

「お前がこれまで付き合ってきたどんな女よりも俺の方がお前のこと理解してる」
「う、ん、まぁそうかもしれないね…」

幼馴染みだし。

「ずっと、アキのこと好きだった」

えーーー!うっそーん。

「…あ、あのさ、俺、男…」
「あ?何年の付き合いだと思ってる」
「だーよねぇ…?」

まじ信じらんない。
信じらんないけど…カナメの目は真剣で、これ以上適当なこと言って誤魔化せない…ってか逃げられそうにない。
そんで顔近すぎて怖いよーーー!!!!!!

「女とは別れろ」
「えぇぇぇ…」
「そうなる時期が早まっただけだ、問題ない」
「そんなぁ…。」
「お前は俺のもんだ。もう誰にもやらねぇ」
「えぇぇぇ〜…!?」
「口答えすんな。わかったな?今すぐ別れてこい」
「…」

凄い勢いで迫ってくるカナメに気後れして黙っていると、射殺さんとばかりの顔で睨まれる。
だから怖いってばぁぁぁ!!

「返事は?」
「…ひゃあい」

俺の返事に満足したのか、カナメは今まで見たこともないようなキレイな笑みを浮かべた。
あ、こいつやっぱ美人だわ。

なんて、一瞬見惚れてしまった俺…ばかばかっ。


あぁー…。
ごめん!ごめんね、ユミちゃん…。
俺、新しい恋を育てるより、自分の身の安全を優先させちゃうようなヘタレなんだ。本当にすまない。


てかてか本当にカナメと付き合うことになるのかな。
そっちの事実に俺は戦々恐々なのであった。



end.


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あきゅろす。
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