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本編(今宵)
8
それが、陸を更に孤独にさせていたと


陸が知るはずの無い事実。




「……でもっ……」

こんな自分が友達になってもいいのだろうかと、少し冷静になり始めた陸は思う。

「なんだよ、星野!俺が友達になるのが不満なのかよ」

昴は頬を膨らまして、ちょっといじけた様な態度をとる。

「ち、違うよ!ただ……」

陸は目線を下に落とす。

「ただ?」

昴は陸を急かす。

「………っ、僕なんか…で、「あー!もうっ」」

昴は陸の言葉を遮った。

「星野のさ、そのネガティブ思考止めない?」

「………ネガティブ、思考…?」

陸は昴の言った言葉を繰り返す。

「そう!星野は何でも感でも、悪い方に考え過ぎだと思うんだよね」

「そうだね」

隆志は昴の言った言葉に頷く。

「嫌なら始めっから、友達になろうとか言わないから!」

昴は最もな事を言う。

「…………っ!」

陸は昴を凝視する。


「もう一回言うよ。


俺達と……友達になってください!」

昴は陸の前に手を差し出した。

陸は少し戸惑った後、ハニカミながら昴の手をそっと握った。

「…………よろこんで…」


陸はこの時思った。


この手を何があっても離したく無いと







――――…



「でね、コイツとは家が隣同士でさ、世間一般的に言うと幼なじみなんだよ。」

「不本意ながらもね。これは仕方が無い事だって諦めてるんだけど、毎日毎日、昴を起こすのは俺の役目になってるんだ。本当、嫌になるよ…」

隆志は溜め息を大きくつく。

「…でも、僕は羨ましいな。僕には幼なじみなんて居ないし…」

「でもな、陸。良いことばっかりじゃ無いんだぜ!あぁ、陸みたいな可愛い幼なじみが欲しかったし!」

「同感」

昴の言葉に隆志は妙に強く頷いた。


教室に入って来る誰もが、この光景を見て動きを止めた。

ある人は、持っていた荷物を全て落とし驚き

ある人は、自分の頬を力強く引っ張り、夢と現実を確認し

ある人は、叫びながら教室を出て行った。

そんなクラスメートの反応を見て、昴は笑い、隆志は失笑し、陸は首をかしげたのだった。





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あきゅろす。
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