本編(今宵)
7
「俺達と、友達になってくんない?」
その言葉を陸は理解できなかった。
反応など出来る訳もなく、陸の動きは止まった。
「……いきなり過ぎたよな、ごめん。気にしなくて良いから」
いくら待っても返事を返さない陸に、昴は無理矢理作った笑顔で言った。
「………っ!ちがッ……」
そんな昴の言葉に、陸は我に帰り慌てて訂正する。
「え?」
昴は陸を見据える。
「ちがうっ!違うッ…、嫌だぁ…嫌…無かった事になんてっ……!」
して欲しくなんて無い。
陸は最後の言葉を飲み込んだ。
其処まで言える勇気が陸には無かった。
それでも、昴や隆志には陸の想いは少なからず伝わっていた。
「……ははっ、此方こそ無かった事になんかしたくないし!だから、ねっ、心配しなくて良いんだって」
昴は陸の頭をポンポンと叩きながら、優しく呟く。
「…ごめん、辛かったよね?良く頑張ったよ」
隆志も陸へと声を掛け、昴同様頭をポンポンと叩いてやる。
辛かった
頑張った
それは、今までの陸を見てきたからこそ、自然と出た言葉だった。
皆、分かっていた。
陸が一人で、寂しいと感じているであろう事を。
分かって居たのに、声を掛けられなかった。
陸には近寄り難い雰囲気があったのも一つの理由。
それ以上に、皆、新庄 青樹と言う存在が恐ろしかったのだ。
入学してから間もなく、青樹と陸が付き合い出したと言う噂が学校内に広がった。
誰かと誰かが付き合いだしたと言う噂は、男子校では特別珍しい話しでは無かった。
だが、その噂の張本人達が普通では無かったのが問題だったのだ。
新庄青樹と言えば、中学生にも関わらず、族の総長をしていたとかしていないとか。
喧嘩はここら辺一体では五本の指に入る程強く、暴力沙汰を何度も起こしたとか。なのに、毎回数日の謹慎程度の処罰。彼の裏には何かあるのでは無いかと、謎の多き恐ろしい男だった。
彼に憧れる者、恋焦がれる者、怨む者、恐る者。様々な思いを彼は集めていた。
そして、星野陸。
彼は誰もを魅力した。
近隣の中学で陸の存在を知らない者は居ないと言う程、陸は有名だった。
男にして置くのは勿体無い美貌。
女は陸に憧れ、嫉妬し、妬んだ。
男は陸に心奪われ、欲情し、距離を取った。
そんな注目を集める二人が付き合い出したとなると、周りは騒がずにはいられなかった。
そして生まれた、暗黙の了解。
自分の身が可愛いのならば、星野陸には必要以上に近づかない方が良い。
新庄青樹が黙っていないと
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